【完全版】コンクリートひび割れ補修の選び方 | 「劣化原因×ひび割れ幅×動き」で判断する実務指針

コンクリートの補修

こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

コンクリート構造物の劣化で、よくあるものは何が思い浮かぶでしょうか。

コンクリートの劣化形態はさまざまなものがありますが、代表的な劣化に「ひび割れ」があります。

ひび割れを見つけたけど、注入すべきか、被覆すべきか、それとも様子見か…
正直、判断に迷った経験はないでしょうか。

ひび割れはよくある劣化ですが、その対応方法は一つに決まっているわけではありません

ひび割れを見つけたら「とりあえず注入」「とりあえず表面被覆」という対応をしてしまうと、数年後に再劣化するケースが非常に多いのです。

ひび割れ補修で一番重要なのは、「幅」「原因」「動き」といった複数の視点から総合的に判断することです。

この記事では、ひび割れの原因に応じた補修方法の選び方について、詳しく解説します。

原因等に応じた補修方法の判定フローも掲載していますので、参考にしていただければと思います。

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鉄コンくん

鉄道会社の土木部門で土木構造物の維持管理を10年程度担当。
特にコンクリートが専門分野です。

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ひび割れ補修の基本的な考え方

ひび割れを発見して考える人

目的は“見た目を直す”ことではない

鉄コちゃん
鉄コちゃん

そもそも、ひび割れがあるとなにがまずいの?

ちょっとくらいなら大丈夫そうだけど。

鉄コンくん
鉄コンくん

ひび割れ自体が、構造物の安全性にただちに影響を与えるケースは少ないです。

ですが、ひび割れがあるという状態は、塩分や水分をはじめとした、コンクリートの劣化因子が侵入する経路があるということであり、それがまずいのです。

ひび割れ補修の目的は、単に隙間を埋めて見た目をきれいにすることではありません。
本来の目的は次のような機能回復です。

鉄筋腐食の進行を防ぐ

水・塩分・炭酸ガスの侵入を抑える

耐久性・使用性を回復させる

つまり、「このひび割れが放置されると、何が起きるか」を考えることがスタートになります。

補修が必要なひび割れ/様子見でよいひび割れ

すべてのひび割れが、ただちに補修対象になるわけではありません。

例えば、乾燥収縮による微細な表面ひび割れなど、すでに進展が止まっている非構造的なひび割れは、機能上問題がなければ経過観察という選択も十分に合理的です。

一方で、

漏水を伴うひび割れ

鉄筋位置まで達している可能性が高いひび割れ

幅が拡大傾向にあるひび割れ

は、耐久性の観点から補修が必要になります。


ひび割れの「原因」で補修の要否を判断する

ひび割れの発生原因を探る人

ひび割れを補修する必要があるかどうかは、ひび割れ幅だけで機械的に判断するのではなく、ひび割れの「発生原因」を踏まえて総合的に判断する必要があります。

「ひび割れが小さいから直さなくて良い」とは限らないのが、判断を難しくするポイントなのです。

ここでは、ひび割れの発生要因「初期欠陥・施工不良」「環境」「構造的・外力によるもの」の3つに大分し、それぞれの補修要否について触れていきます。

初期欠陥・施工不良によるひび割れ

まず1つ目は、初期欠陥・施工不良によるひび割れです。

代表的なものに、以下のようなパターンがあります。

施工時の締固め不足

コンクリートの打ち継ぎ時間・打ち込み速度の配慮不足

初期養生不良

これらは、構造物ができて直後の比較的早い段階で現れることが多く、進展が止まっているケースも多いのが特徴です。

ひび割れ幅にもよりますが、対処が必要ではないものが多いです。

環境作用によるひび割れ

2つ目は、環境作用によるもので、これらは構造物がおかれている環境によって、劣化が徐々に進行するものです。

代表的なものは以下の通りです。

塩害による鉄筋腐食

ASRによる骨材の膨張

凍害によるスケーリング

環境条件そのものを変えることは難しいため、対策を行わない限り、劣化が自然に止まることはほとんどありません

ひび割れが徐々に拡大するため、致命的な劣化に至る前に早期に対策を取ることが重要になります。

また、劣化要因に応じた適切な補修方法をとらないと、劣化が再発するリスクがあることにも留意する必要があります。

荷重・構造的要因によるひび割れ

3つ目は、荷重等によるひび割れです。

ここには、常時の列車などの車両による活荷重のほか、地震等の急激な外力の作用も含みます。

代表例は以下の通りです。

設計荷重を超える重量の付加

大規模な地震

地盤沈下によるバランスの変化

このタイプのひび割れは、単なる表面補修では不十分な場合がほとんどです。

地震等の一時的な荷重であれば表面的な補修で済むこともありますが、それ以外は構造物自体の剛性を高めるなどの、抜本的な対策を取る必要があります。

ひび割れの原因をもっと詳しく知りたい場合については、こちらの記事を合わせてご覧ください。。


ひび割れの「進展」有無と補修工法の適用範囲

ここまで、ひび割れの発生原因別の補修の要否を説明しました。

ひび割れには、「進展するもの」「これ以上進展しないもの」の2つがあることが分かったと思います。

ここからは、進展する・しないに応じて、どのような補修が有効なのか解説していきます。

進展しないひび割れ

もともと進行しないひび割れ(初期欠陥によるもの)や、原因が解消され、進展が止まっているひび割れに対しては、目的に応じて

劣化因子の侵入防止を目的とする場合:表面被覆工法
部材内部までの一体化を図りたい場合:注入工法

といった工法が選択されます。

これらは主に、ひび割れ幅が比較的小さい(0.5㎜未満)のものに有効な補修方法です。

進展するひび割れ

塩害ASRなどの、環境要因によるひび割れは、ひび割れ幅が進行により変化していくことが特徴です。

このタイプのひび割れに、表面被覆や注入をおこなうと、ひび割れの進行(幅の広がり)に補修材がついていけず再ひび割れを誘発することになります。


そのため、追従性を考慮した工法を適用するか、ひび割れの原因を根本的に解消することが必要になります。

ひび割れの補修方法にどんな工法があるか、こちらの記事で詳しく解説しています。

この先に進む前に読んでおくと、理解がスムーズになりますので、ぜひ合わせてご覧ください。


幅・原因・動きから補修方法を決めるフロー

ひび割れの補修方法を決めるには、以下のような流れをとると合理的です。

原因を特定する

②原因に応じて、進展するひび割れか、そうでないか判断する

進展するひび割れの場合、「原因」と「要求性能」に応じた補修方法を選択する

進展しないひび割れの場合、「ひび割れの動き」と「ひび割れ幅」に応じた補修方法を選択する

①②については、この記事の前半部分で解説しました。

ここでは、③④の部分を詳しく説明します。

進展するひび割れの場合

進展するひび割れの場合、重要なのは「原因を除去」することです。

単にひび割れをふさぐ・表面を覆うだけでは、ひび割れが進行して広がってしまうと、補修の意味がなくなってしまうからです。

しかし、原因を完全に除去するのは、コンクリートの大規模な打ち替えが必要になるなど、対策に要する費用が膨大になることが多いです。

たとえばASRであれば、反応性骨材を全部除去することは不可能に近いです。

そういった場合には、多少のひび割れがあっても「要求性能」を満たせるのであれば、それ以上ASRが進行しないよう、水の供給を遮断するために被覆するという手段を取ることもあるのです。

なんか重要そうな言葉だけどさ、「要求性能」ってなんなの?

簡単にいえば、「構造物に求められる役割」のことです。

たとえばコンクリートの橋であれば、要求されるのは「橋の上を通る人や車を安全に通過させること」です。

これを満たすには、必ずしも「一つもひび割れを生じさせない」ことが必要というわけではないですよね。

なるほどね。ひび割れがあっても安全に通せるなら、それ以上ひび割れを増やさなければいいっていう考え方もできるのか。

進展しないひび割れの場合

続いて、進展しないひび割れの場合ですが、こちらのポイントはひび割れの「動き」と「幅」です。

「動き」ってどういうこと?進展しないひび割れってのは、動かないんじゃないの?

実は、ひび割れは微妙に開いたり閉じたり、「呼吸」するものがあるんです。

呼吸?生き物でもないのに、そんなことありえるの?

わかった、最近鬼滅の刃でも読んだんでしょ。

鉄コンくん
鉄コンくん

違います。

温度変化や荷重の作用によって、ひび割れが開いたり閉じたりするんですよ。

これを、「ひび割れが呼吸している」と呼ぶんです、

へー。じゃあ、「挙動がない」っていうのはどういうものがあるの?

周りの部材に抑えられて伸縮しないものや、温度変化を受けにくい位置(屋内や水中など)にある構造物が該当します。

POINT

「進展する/しない」→ひび割れの“成長”

「動く/動かない」→温度や荷重による“開閉挙動”

両者は似ているようで意味が異なるため、区別して考える必要があります。

もう1つの「幅」についてはシンプルです。

動きがないひび割れはふさいでしまえば、劣化因子が侵入しなくなるので、新品同様の性能に戻ります。

幅によって、ベストなふさぎ方がある程度決まっているということです。

ひび割れの対策方法を選定するには?

ひび割れの原因や幅などによって、適した補修方法を選ばないといけないんだね。

でも、どうやって決めたらいいんだろう。

実際、現場でひび割れを見つけて、すぐに適切な補修方法を決めるのはとても難しいです。

そこでここでは、ひび割れの進展有無に応じ、補修方法の選定フローを紹介します。

「進展しないひび割れ」の補修方法判断フロー

進展しないひび割れの場合の補修方法判定フロー

「進展するひび割れ」の補修方法判断フロー

進展するひび割れの場合の補修方法判定フロー

このフローは、日本コンクリート工学会の「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」をもとに、「一般的な考え方を紹介するものです。

実際に補修方法を選定する場合は専門家の判断を仰いてください。

これさえあれば、ひび割れ補修はばっちりだね!

鉄コンくん
鉄コンくん

そうもいかないのが、コンクリートの維持管理の難しいところです。

コンクリートには、複合劣化と呼ばれる、複数の原因によってひび割れが生じているパターンがよくあります。

また、現場の条件によって、フロー通りの補修工法が施工できないなんてこともあるんです。


おわりに

コンクリートのひび割れ補修は、「幅が何mmだからこの工法」というように、単純なルールで決められるものではありません。

ひび割れの発生原因、将来的に進展するかどうか、温度や荷重による挙動(動き)といった複数の視点を組み合わせて考えることで、はじめて合理的な補修方針を立てることができます

現場では、時間や予算の制約から「とりあえず埋める」「とりあえず塗る」という判断が求められる場面も少なくありません。

しかし、その場しのぎの補修は、結果的に再劣化を早め、維持管理コストを増やしてしまうこともあります。

ひび割れ補修は、目の前のひび割れを直す作業ではなく、
構造物をどこまでの性能で、どれくらいの期間使い続けたいのかを考える行為でもあります。

この記事が、現場で補修方法に悩んだときの「判断の軸」として、少しでも役に立てば幸いです。

ひび割れを見つける重要なプロセス「点検(検査)」についてもっと知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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