こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
みなさんの身近に、橋はたくさんありますよね。その1つ1つが、日々の点検によって安全に使えているということは、知っている方も多いのではないでしょうか。
そんな「橋の点検」とは、どんな風に行われるのか、そこまで知っている方は少ないと思います。
橋りょうの点検というと、「ドローンで撮影して終わり」「ロボットが自動で調べてくれる」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。
実際、技術は進歩していて、高所や狭い場所の観察を機械が補助する場面は増えています。
しかし、最後に異常を見つけるのは結局“人の目”と“経験”です。
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(筆者)
狭く暗い隙間に入って、小さな劣化の芽を見つける。
そんな地味で大変な仕事ですが、実はやりがいもある仕事なんですよ。
本記事では、点検の目的から、どんな作業なのか、点検のやりがいについても解説します。
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この記事は、鉄道会社の土木部門で構造物の維持管理を専門にしていた経験のある筆者が解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
当ブログでは、検査(点検)のことが体系的にわかるよう、全3記事で解説しています。
この記事は「検査のやり方」を詳しく取り扱っています。
「検査のルール」「検査の判定基準」をそれぞれ知りたい方は、以下の表から残りの2記事をぜひ読んでみてくださいね。
| 記事タイトル | わかること |
| 【解説】鉄道土木構造物の「検査」とは?ルールや周期、方法を教えます | 検査の種類、ルールや実施頻度、健全度ランクの考え方など |
| 【解説】橋りょうの「点検」とは何をする? (この記事) | 検査(点検)の方法、検査の流れ、やりがいなど |
| 【解説】鉄道土木の「検査」って、なにを基準に判定しているの?|検査のバイブル「維持管理標準」を紐解く | 検査の判定基準、維持管理標準とは何か、維持管理標準は実務でどう使われるのか |
点検ってなに?どんな仕事なの?
点検とは何か、難しい言い回しをすると、「構造物の劣化と安全リスクを評価し、補修や運用判断につなげる一連の作業」のことです。
簡単に言えば、「構造物の健康診断」です。
点検にはいくつか区分があり、鉄道でいえば2年に1度の周期で「通常全般検査」というものを行います。
また、10年に1度、より詳細な検査である「特別全般検査」を実施します。
たとえ話ばかりですが、
といったイメージです。
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「検査」というワードが出てきて「おや?」と思った方もいるかもしれません。
鉄道分野では、点検のことを「検査」と呼ぶのです。
「点検」と呼ぶのは、主に道路分野です。
橋りょう点検は、技術が進歩した今でも人の手が主役です。
ハンマーを握りしめてコンクリートをたたく「打音検査」という作業で、たたいた音の違いでコンクリートの劣化を判断したり、わずか数㎜のひび割れを見つけるために、何mもある大きな橋を隅から隅まで眺めたりします。
なんで点検をしなきゃいけないの?

なぜ点検が必要なのか、理由は大きく2つです。
① 安全を確かめるため
橋りょうは、上を通る車や列車などを支える重要構造物です。
ひび割れをはじめとする劣化が進めば、本来の性能を発揮できなくなり、最悪の場合崩落するような事態も起こり得ます。
また、橋からコンクリート片などの落下物があれば、下を通る通行人などに大けがを負わせてしまうリスクもあります。
過去には、2022年にアメリカのファーンホロー橋という橋りょうが、不適切なメンテナンスが原因で崩落したという事故が起きています。
ペンシルバニア州が管理する橋りょうでしたが、劣化が起きていることに気づきながらも、適切な補修が行われずに崩落にまで至ってしまったそうです。
参考:「これでいいのか専門技術者」道路構造物ジャーナルNET
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日々の適切なメンテナンスが、利用者の安全を支えているのだと改めて感じさせる事故でした。
② 法律で義務付けられているため
橋りょうの点検は、法律で義務付けられています。
道路と鉄道でそれぞれ違う法のもとに、構造物の定期検査の実施と周期が定められているのです。
道路:5年に1回(道路法施行規則)
鉄道:2年に1回(施設および車両の定期検査に関する告示)
つまり、橋りょうの点検は“必要だからやる”だけでなく“安全の制度として組み込まれている”のです。
鉄道における検査のルールについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
■ 点検で何を見つけるの?(劣化の種類)
点検で着目する劣化は大きく二種類に分かれます。
① 構造性能に関わるもの
・ひび割れ
・鉄筋腐食
・変形・沈下 など
これは構造物の「強さ」に関わる領域です。こういった劣化を見逃す・対処が遅れると、構造物の安全性低下に直結します。
② 第三者の安全に関わるもの(落下物)
・剥離・剥落(コンクリート片などが剥がれて落下すること)
・浮き(腐食した鉄筋がコンクリートを押し出して、コンクリート片が落下しそうになっている状態)
・漏水
構造物自体の劣化も重要なポイントですが、劣化によって落下したもので第三者に被害を与える「落下物」も非常に重大なリスクです。
大きな落下物があると、列車や車の通行にも大きな影響を与えます。ひとたび発生すれば重大インシデントになるため、小さな浮きや剥離も軽視できません。
2024年には、鉄道地下トンネルの換気塔から100kg以上のコンクリート片が落下し、首都圏の鉄道を半日以上止める重大事象も起こっています。
参考:JR横須賀線 トンネル内にコンクリート片“113キロ”落下:日テレNEWS
鉄道の「落下物」についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
どうやって点検するの?(点検の流れ)

橋りょうの点検は準備 → 現場 → 判断の流れで進みます。
① 事前準備
いきなり現地に行って闇雲に橋を眺めるだけでは、いい点検はできません。
何事も事前の準備が大切です。
橋りょう点検の事前準備で大切なことは、大きく2つです。
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橋りょうまでどうたどり着くのか、道を確認することも地味に大切な作業です。
僕が鉄道の検査の仕事をしていた時は、道路もない山の中にある橋が検査対象で、近づくだけでとても苦労したことも1度や2度ではありません。
② 現地点検
事前準備で整理した着眼点を理解しながら“自分で探す”仕事です。
目視で新たな劣化がないか、前回の点検記録から劣化が進行していないかなど調査します。
ひび割れ幅の計測や、打音により内部の劣化が生じていないか確認することもあります。
③ 健全度判定
健全度判定とは、見つけた劣化に対して、「経過観察で良いか」「詳細調査が必要か」「補修が必要か」などを判断する作業です。
道路と鉄道で違いますが、各社・自治体等で定める判定基準があり、それに基づいて判断するのが基本です。
鉄道の検査における判定基準については、こちらの記事で解説していますので、良ければご覧ください。
点検後の判断(補修につなげる)

点検は「見つけて終わり」ではありません。
までを検査の中でイメージできる人が、「一流の点検者」です。
よく言われる例えとして、以下のようなものがあります。
・点検者は「構造物を診る医者」
・点検は「構造物の健康診断」
お医者さんに、「診断しましたよ。」だけ言われても困りますよね。
診断した結果の判定(経過観察でいいのか、治療=補修が必要なのか)と、どう治療していくか(=どう補修するか)まで責任をもって示すのが、点検者の仕事です。
点検のやりがい・面白さ
点検作業は一見地味な仕事ですが、実はとてもやりがいがあって面白い仕事です。
地味と言われる仕事ほど、現場に立つと奥深いものです。
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もちろん、構造物は人間の患者さんと違って声を出して症状を伝えてくれるわけではありません。
劣化=症状を見極めて、適切な原因=病名を診断し、ときには手術=補修まで自分の判断で手掛けるのが、点検の醍醐味なんですよ。
まとめ
橋りょうの点検は、構造物のドクターが健全性を診断する、まさに医者のような仕事です。
機械化が進んでも、最後に判断を下すのは人です。
さまざまな劣化に対して適切な判断をするのはとても難しい仕事ですが、自分の判断が構造物の延命につながり、社会インフラの維持に貢献できたときは、とてもやりがいを感じられます。
この記事が、点検という仕事のリアルや価値を知るきっかけになれば幸いです。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!






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