こんにちは。記事をご覧いただきありがとうございます。
鉄道の安全を支えるうえで欠かせない業務のひとつが、鉄道土木構造物の「検査」です。
橋りょう、トンネルなど、鉄道を支える土木構造物は多岐にわたり、日々列車荷重や風雨・温度変化といった環境作用を受け続けています。
その状態を正しく把握し、必要に応じて補修などの対策を講じることは、鉄道土木技術者の重要な責務です。
この記事では、
などについて、専門的な内容をかみ砕きながら解説します。
-150x150.png)
(筆者)
この記事は、鉄道会社の土木部門で構造物の維持管理を専門としていた筆者が執筆しています。
ぜひ最後までご覧ください。
※検査名称や判定区分は鉄道事業者ごとに差異があります。
本記事では一般的な考え方を整理しています。
当ブログでは、検査(点検)のことが体系的にわかるよう、全3記事で解説しています。
この記事は「検査のルール」を詳しく取り扱っています。
「検査のやり方」「検査の判定方法」をそれぞれ知りたい方は、以下の表から残りの2記事をぜひ読んでみてくださいね。
| 記事タイトル | わかること |
| 【解説】鉄道土木構造物の「検査」とは?ルールや周期、方法を教えます (この記事) | 検査の種類、ルールや実施頻度、健全度ランクの考え方など |
| 【解説】橋りょうの「点検」とは何をする? | 検査(点検)の方法、検査の流れ、やりがいなど |
| 【解説】鉄道土木の「検査」って、なにを基準に判定しているの?|検査のバイブル「維持管理標準」を紐解く | 検査の判定基準、維持管理標準とは何か、維持管理標準は実務でどう使われるのか |
鉄道土木構造物とは?
鉄道土木構造物とは、鉄道の線路や駅を支える土木系の構造物全般を指します。
代表的なものは以下のとおりです。
これらは鉄道の安全運行を支える“縁の下の力持ち”であり、ひとつでも重大な劣化があれば列車の安全に直結します。
そのため、定期的な検査が必須となっています。
検査ってなに?

鉄道業界における「検査」とは、構造物の状態を把握し、劣化の有無や進行度を評価するための一連の作業です。ざっくり言うと、「構造物の健康診断」です。
ここでは、検査の目的・種類・方法・頻度について解説します。
検査とは、土木構造物の点検・診断をすること
鉄道における検査は、以下のような作業を包括しています。
-150x150.png)
(筆者)
ちなみに道路分野では「検査」ではなく「点検」と呼ぶのが一般的です。
この記事は検査の「ルール」を中心に解説しますが、検査(点検)ではどんなことをするのか「実務」を知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
なぜ検査をしなければならない?検査を義務付ける法体系
鉄道構造物の検査は、単なる努力義務ではありません。
国土交通省令「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」により、鉄道事業者は定期的な検査を行うことが義務付けられています。
以下、条文の抜粋です。
第九十条 施設及び車両の定期検査は、その種類、構造その他使用の状況に応じ、検査の周期、対象とする部位及び方法を定めて行わなければならない。
検査にはどんな種類がある?
鉄道土木構造物の検査は、目的に応じて以下のように分類されます。(名称は会社により異なります。)
目的や必要性に応じて、これらの検査を使い分けています。
どんな方法で行われる?
検査方法は構造物の種類によって異なりますが、代表的なものをいくつか示します。
鉄道では列車運行に支障が出ないよう、夜間に検査を行うことも多いのが特徴です。
検査の方法の一つに「ひび割れ幅の測定」がありますが、コンクリートのひび割れについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
どれくらいの頻度でやるの?
検査頻度(周期)は、国交省の告示「施設及び車両の定期検査に関する告示」で最低限の基準が定められています。
以下が告示の抜粋です。
第二条 (線路の定期検査)
線路については、次の表の上欄に掲げる鉄道の種類ごとに、同表中欄に掲げる施設の種類に応じ、それぞれ同表下欄に掲げる期間を超えない期間ごとに定期検査を行わなければならない。
| 鉄道の種類 | 施設の種類 | 期間 |
| 新幹線鉄道以外の鉄道 | 軌道 | 一年 |
| 橋りょう、トンネルその他の構造物 | 二年 | |
| 新幹線鉄道 | 軌道(本線の軌間、水準、高低、通り及び平面性に限る。) | 二月 |
| 軌道 | 一年 | |
| 橋りょう、トンネルその他の構造物 | 二年 |
2 トンネルについては、前項の定期検査のほか、新幹線鉄道にあっては、十年を超えない期間ごとに、新幹線鉄道以外の鉄道にあっては、二十年を超えない期間ごとに詳細な検査を行わなければならない。
-150x150.png)
(筆者)
長い条文ですが、要約すると、
「すべての土木構造物が2年に1度定期検査(通常全般検査)をする」ことになっていて、
「トンネルのみ在来線10年・新幹線20年の頻度で詳細検査(特別全般検査)をすることが定められている」
ということです。
余談ですが、トンネルのみ特別全般検査の周期が定められている背景には、平成12年に発生した中央自動車道・笹子トンネル天井版落下事故があると考えられます。
検査の判定基準は?

検査では、見つかった劣化や損傷を健全度ランクとして評価します。 鉄道では一般的に、状態が良い順に S → C → B → A の4段階が用いられます。
Aランクが付いた場合は、個別検査を実施し、さらに詳細な評価を行います。
この個別検査では、Aランクの中でも緊急度に応じて、状態が良い順にA2/A1/AAの3段階に区分されます。

ランクがいっぱいあるのはわかったよ。
でも、実際の劣化がどのランクに該当するのか、どうやって判定するの?
-150x150.png)
いいところに気づきましたね。
実際の判断は現場条件によって多種多様ですが、一般的な判断の基準(目安)としては、
・鉄道総合技術研究所が発刊する「鉄道土木構造物維持管理標準・同解説」
・各社が整備している検査マニュアル
を参考にして判定することが多いです。
「鉄道土木構造物維持管理標準・同解説」について、実務でどのように使われているのか、またどんな書籍なのか知りたい方は、こちらの記事でまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
検査をした後の流れは?

検査は「見て終わり」ではありません。
検査結果に応じて、標準的には次のようなアクションがとられることが多いです。
検査体系のまとめ(種別・内容・頻度・判定・対応)
ここまでの内容で、鉄道土木構造物の検査は種類・目的・頻度・判定・その後の対応が体系的に整理されていることがわかりました。
ここまでに記載した内容を俯瞰できるように以下の表にまとめました。
●検査の種類・内容・頻度等
| 区分 | 内容 | 主な目的 | 実施頻度(一般例) | 判定との関係 | 判定後の対応 |
| 初回検査 | 完成時の状態確認 | 竣工時の品質確認 | 竣工時のみ | ― | ― |
| 通常全般検査(定期検査) | 目視中心の基本検査 | 劣化の有無を把握 | 2年周期 | S/C/B/A の判定を行う | B以上で詳細検討へ |
| 特別全般検査 | 打音・計測など詳細検査 | 劣化の進行度を把握 | 10年周期 | B/A の精査 | 必要に応じ補修計画 |
| 随時検査 | 地震・豪雨・事故時 | 異常時の安全確認 | 必要に応じて | 状況に応じ判定 | 緊急対応の判断材料 |
| 個別検査 | Aランク構造物の詳細調査 | 補修計画のための評価 | Aランク発生時 | A2/A1/AA の詳細判定 | 緊急度に応じて補修・監視・制限 |
●健全度ランクの詳細(A2〜AAを含む)
| ランク | 状態 | 意味 | 必要な対応 |
| S | 健全 | 問題なし | 通常管理 |
| C | 軽微な劣化 | 機能に支障なし | 経過観察 |
| B | 進行性のある劣化 | 放置するとAに至る可能性 | 詳細検討・計画的補修 |
| A2 | 要注意 | 直ちに危険ではないが注意 | 経過監視・計画的補修 |
| A1 | 要対策 | 安全性への影響が懸念 | 早期補修・モニタリング |
| AA | 緊急対策 | 安全性に重大な影響の可能性 | 緊急補修・構造物の使用制限・列車の徐行/運休等 |
おわりに
この記事では、鉄道土木構造物の「検査」とはなにか、ルール等を詳しく解説しました。
鉄道土木構造物の検査は、鉄道の安全を支える最も重要な業務のひとつです。
法令に基づき定期的に構造物の状態を確認し、劣化を早期に発見することで、大きな事故を未然に防ぐことができます。
検査の仕組みを理解することは、鉄道土木技術者としての基礎であり、補修計画や維持管理全体を考えるうえで欠かせません。
この記事を通して、土木構造物の「維持管理」という仕事について興味を持った方は、検査以外の仕事のこともこちらの記事で解説していますので、合わせてご覧ください。。
また、鉄道会社の土木部門で働く土木技術者が取得すべきおすすめの資格については、こちらの記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!








コメント