【解説】鉄道橋が揺れる理由は?キーワードは「たわみ」と「共振」

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こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

皆さんが日常的に見かける橋の上には、列車や車が通っていますよね。

列車や車が橋の上を通過すると、外観上なにも変化はないように見えますが、実はちょっとだけ沈み込んでいるんです。

この沈み込みを工学的には 「たわみ(変位)」 と呼び、列車の揺れの原因になったりします。

鉄コちゃん
鉄コちゃん

え?橋が沈むってなんかやばそうだけど、大丈夫なの?

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

大丈夫です。橋を設計するとき、たわみの発生もきちんと考慮しているんですよ。

だから、列車などに乗っていて橋がちょっと沈んで揺れるくらいは、正常な動きなんです。

そうなんだ。でも、列車に乗ってて橋が揺れるのはちょっと怖いな。

どれくらい揺れるものなのかな?

気になりますよね。

では、鉄道橋の揺れの原因となる「たわみ」とはどんな現象なのか、橋のメンテナンスの上でどのように管理されるものなのか、詳しく解説していきますね。

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鉄コンくん

鉄道会社の土木部門で土木構造物の維持管理を10年程度担当。
特にコンクリートが専門分野です。

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そもそも“たわみ”とは何か

橋がたわんだ状態のイメージ図

たわみとは、荷重を受けたときに生じる桁の沈み込み量のことです。

橋が沈むことで列車は上下に動き、これが揺れの原因となります。

橋桁は通常、両端にある支承という部分に支えられる構造となっています。

つまり、橋桁の真ん中に物が乗る(重さが作用する)と、最も沈み込みが大きくなるのです。

分かりやすく例えれば、机と机の間に割り箸を渡している状況をイメージしてください。

割り箸の真ん中を指でぐっと下に押したら、割り箸はしなりますよね。

これが鉄やコンクリートの橋でも起こっていると考えてくださいね。

支承という部材の話が少し出てきましたが、どんな部材なのか興味がある方は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

橋はどれくらいたわむ?

橋は荷重を受ければたわむというのは、ここまでの話でイメージがついたと思います。

これは物理的に正常な動きで、ゼロにはできません

そのため、橋の設計においても、許容できるたわみの量が計算されています。

さっきも聞いたけど、実際どれくらいたわむものなの?

桁の大きさ上に載るものの重さ・速度などで生じるたわみは全然違うので、「どれくらい」というのはちょっと難しいですね。

そっか。じゃあ、一番たわみが大きくなるのはどんな条件なの?

そうですね・・・単純に言えば、「重くて速いもの」が「長い桁」に載ればたわみは大きくなります。

じゃあさ、とっても重そうで速い新幹線が、何十mもある橋に載ったら、どれくらい揺れるのかな。

うーん、じゃあ仮に、30mの桁に、時速250㎞の新幹線が載ったとしたら・・・(計算中)

(そんなに重くて速いものなら、10㎝くらいは沈むのかな。)

出ました。だいたい5~6㎜くらいですかね。

エッ、少な!!

※上の会話はたわみが㎜単位の規模であることを示すためのイメージです。正確なたわみ量は桁の構造などで大きく変わります

 橋がたわむと何が起こる?

たわみで橋が揺れ、飲み物がこぼれて困る人のイメージ

橋がたわむのは正常な挙動ですが、橋の劣化などにより設計で考慮している以上のたわみが生じることがあります。

ここでは、たわみが大きくなると何が起こるのかを、鉄道構造物の観点で説明します。

鉄道橋りょうの設計の基本的な考え方を知りたい方は、こちらの記事にまとめていますので、合わせてご覧ください。

乗り心地が悪化する

たわみが大きくなると最初に起こる問題は、乗り心地の悪化です。

たわみが大きくなると、 当然上を通過する車両側の揺れも大きくなります。

たわみの大きい橋桁を通過するときには、「“ドン”という衝撃」や、「車体の上下揺れ」といった形で影響が出てきます。

ドンって揺れるのはやだなぁ。飲み物とかこぼれちゃいそう。

車輪がレールに追従できなくなる(安全性の低下)

乗り心地の悪化で済めばいいのですが、たわみがさらに大きくなると、列車の走行安全性の低下を引き起こし、最悪の場合脱線につながります。

え!脱線!?なんでそんなことになっちゃうの。

橋がたわむと、橋の上を通るレールも一緒に沈みます。

レールの上を走る列車の車輪も当然、その動きについていこうと上下に動きます。

ふむふむ。そうだね。

しかし、たわみが大きすぎると、車輪がたわみについていけなくなってしまうんです。

そうなると、車両の浮き上がりという現象につながり、最悪の場合脱線に至ります。

橋の劣化を早める(耐久性の低下)

桁下面に曲げひび割れが出ているイメージ図

たわみが大きい状態が続くと、 橋自体の寿命が短くなるという弊害もあります。

たわみが大きくなると、設計上考慮していない挙動が生じることで、橋の構造部材に余計な負担がかかります。

具体的には、桁を曲げようとする大きな力が作用し、ひび割れという形で劣化のサインが現れます。

曲げモーメントが大きくなる桁の真ん中(支間中央)に、桁を横切るような形でひび割れが出るのです。

たわみが大きい曲げようとする力が大きいひび割れが増える剛性が落ちる さらにたわむという悪循環が起きるのです。

つまり、 たわみの変化は劣化の“初期症状” として現れるということです。

 たわみが大きくなる原因は?

設計通り作られている橋には通常、大きなたわみは生じません

桁のひび割れ等の劣化が生じることで、設計で想定している強さを発揮できなくなり、だんだんとたわみが大きくなります。

特に、「共振」という現象が起こると、橋の劣化が進み、たわみが一気に大きくなることがあるんです。

共振とは?

共振現象をブランコで例えるイメージ図

共振とは、橋の固有振動数と、列車が与える荷重のリズムが一致してしまう現象 です。

固有振動数?生まれて初めて聞いたよ。

橋は必ず「この速さで揺れると一番揺れやすい」という固有のステータスを持っているんです。

これを固有振動数と言います。

なんかよくわかんないな。

で、その固有振動数が列車のリズムと一致すると共振?が起こるっていうこと?もっと分かりやすく教えてよ。

簡単に言えば、一定のリズムで連続でたたかれると、どんどん揺れが大きくなるというのが、共振という現象です。

ブランコに乗っているとき足で前や後ろに一定の速度で揺らすと、ブランコの揺れが大きくなって楽しいですよね。実はこれも共振現象の一つなんです。

つまり、橋桁=ブランコで、足で揺らす=列車にたたかれる ってことか!

足で揺らす速さ=列車の速度によって、共振が起こるかどうか決まるんだね。

珍しく話が早いですね。

もしかして、私のことバカにしてる?

いつもバカにされてるので、たまにはお返しです。

共振とは

列車が橋の上を通過するとき、車輪の間隔に応じて橋に周期的な力を与える。 この周期が橋の固有振動数に近づくと、揺れが増幅される現象を指す。

共振が起こると何が問題か

共振が起きると何が問題かというと、橋が劣化していなくてもたわみが大きくなるということです。

それにより、

乗り心地の悪化走行安全性の低下

桁のひび割れなどの劣化が加速する

つまり共振は、 快適性・安全性・耐久性のすべてに影響する現象 です。

共振以外にも、コンクリート桁にひび割れが生じる原因はたくさんあります。詳しく知りたい方はぜひこちらの記事もご覧ください。

 たわみを抑えることはできる?

ここまで読んでいただくと、

たわみは物理的に必ず生じる

しかし、大きすぎるとまずい

という点が分かったと思います。

では、鉄道ではこの「まずい状態」をどう防いでいるのでしょうか。

結論から言えば、 “たわみそのものをゼロにする”のではなく、 “たわみが危険な状態に近づいていないかを検査する” という考え方で管理しています。

 鉄道では、たわみをどのように管理している?

橋を検査している様子

鉄道の維持管理では、たわみを「橋の健康状態を示す指標」として扱います。

具体的には、次の3つのステップで管理しています。

まずは“見た目の変化”を確認する(定期検査)

橋桁の下面や側面に、ひび割れなどの異常がないかを確認します。

ここで重要なのは、 たわみが大きくなる前には、必ず何らかの“兆候”が現れる ということ。

たわみは劣化の初期症状なので、 見た目の変化を見逃さないことが第一歩です。

鉄道における「検査」とはどういう制度なのか、またどのように行われるかを知りたい方は、こちらの記事(検査とはどういう制度か)こちらの記事(検査はどのように行われるか)をご覧ください。

“たわみ量”を実測する

ひび割れや振動の増加など、気になる兆候があった場合は、 列車の通過に合わせてたわみ量を測定します。

測定したたわみ量は、設計で想定しているたわみ値と比較し、「今の橋がどれくらい健全か」を判断します。

“徐行”や“補修”で対応する

劣化が大きい場合や、たわみが大きい場合には補修を計画します。

また、列車の安全に影響が出そうな場合は、補修までの間に列車を徐行させる措置をとることもあります。

なんで危ないときは徐行させるの?

列車の速度が下がると、橋に与える“揺らし方のリズム”が変わるからです。

ブランコで例えれば、足の揺らし方をわざとゆっくりにすれば、ブランコの揺れはおさまりますよね。

また、速度が遅くなれば、列車が通過した時の衝撃自体も小さくなります。

つまり徐行は、橋にかかる動的な負担を一時的に軽くするための安全策なのです。

コラム:乗っている人からの情報が何より重要

検査は、そんなに高頻度に実施しているわけではありません。

鉄道土木の分野では通常、検査は2年に1回です。

しかし、もっと高頻度にたわみの有無を把握している人がいます。

それが、列車に乗っている乗務員(運転士・車掌)です。乗務員は日々列車に乗っているため、たわみの増加によって列車に普段生じない揺れを感じたら、すぐに関係者に情報が回ります。

そういった情報を得て現地を確認し、異常の有無を確かめることもあるのです。

おわりに

鉄道橋のたわみは、普段は目に見えません。 しかし、橋の状態を最も早く知らせてくれる重要な情報です。

たわむこと自体は正常

しかし“たわみ方”が変わる危険

共振安全性・快適性・耐久性のすべてに影響

鉄道では、たわみの“変化”を管理している

こうした視点を持つと、 橋の揺れが「怖いもの」ではなく、橋が発するメッセージとして理解できるようになります。

鉄道橋の健全性を守るうえで、 たわみを正しく捉える視点は欠かせません。

この記事が、鉄道橋の揺れの原因と、たわみという現象に関しての理解につながれば幸いです。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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