こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
この記事では、土木インフラの維持管理に関わる人が取得すべき資格を3つ紹介します。
単にどんな資格か紹介するだけでなく、取得難易度や受験に必要な要件を、インフラ業界で働く方に向けた目線で解説していきます。
また、どんな順番で資格を取っていくのが良いのかも、併せて記載していきます。
どの資格も、自身の知識・技能の向上だけでなく、社内評価アップや資格手当がつく、転職に活かせるなど、働いていくうえで必ず役に立つものばかりです。
インフラ業界で働く人のキャリアアップに参考になれば幸いです。
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(筆者)
この記事は、インフラの維持管理をする仕事の一つである、鉄道会社の土木部門で働いた経験のある筆者が解説します。
土木インフラの維持管理に関わる仕事とは?

具体的な資格の話をする前に、まずはこの記事の対象となる「土木インフラの維持管理に関わる仕事」について整理していきます。
まず「インフラ」とは、簡単に言えば「私たちの生活を支える社会基盤」であり、生活していくうえでなくてはならないものです。
具体的には、電気・ガス・水道・道路・鉄道など様々な分野があります。
このインフラに関わる仕事として、「インフラメンテナンス(維持管理)」というものがあります。
これは、インフラ設備の点検・修繕といった保守を担う仕事です。
唐突な話になりますが、2025年1月に埼玉県八潮市で発生した、水道管劣化による道路陥没事故は、まだ皆さんの記憶に新しいと思います。
日本のインフラの多くは高度経済成長期につくられたものであり、今後老朽化による不具合が多発すると考えられています。
インフラメンテナンスは、これからますます重要性を増していく分野であるということです。
次の項から、そんなインフラメンテナンス(維持管理)に関わる仕事は、具体的にどんなものがあるのかを解説していきます。
公務員(技術系)
皆さんが普段利用する道路や水道管といったインフラは、その多くが自治体の財産であり、管理しているのは自治体で働く技術系公務員です。
その管理する財産は、道路・橋梁・トンネル・河川施設・上下水道・公園など多岐にわたり、広範な土木知識が求められます。
資金が潤沢な自治体ばかりではなく、限られた予算で膨大なインフラを管理しなければならないという課題を抱えている市町村も多いです。
道路管理者(NEXCO(ネクスコ)等)
続いて、道路管理者(NEXCO(ネクスコ)等)です。
NEXCOをはじめとする民間の道路管理者は、高速道路の運営が主たる事業となります。
そのため、管理する財産は主に道路となりますが、そのエリアは1つの自治体と比べたら非常に広範です。
大規模リニューアル工事のような、修繕にかかわる通行止めを伴う工事を積極的に行っており、CM等で耳にしたことがある方も多いと思います。
鉄道事業者(JR等)
続いては、鉄道事業者(JR等)です。
JRをはじめとする鉄道事業者は、こちらもNEXCOと同じく民間企業です。
全国に広がる鉄道網を維持管理していますが、会社によってその運営延長はさまざまです。
管理する財産は主に鉄道となりますが、道路と違い片側通行規制や通行止めといった手法をとることが難しいため、鉄道が走らない夜間にしか作業ができないことも多いです。
近年は、地方ローカルをはじめ、昼間に列車を止めて(運休して)修繕工事等を実施するという事例も増えてきています。
その他インフラ管理者
その他のインフラ管理者としては、電気・ガス・通信などがあります。
これらの事業者においても、基盤となる土木設備を数多く所有していることから、土木設備の維持管理を専門に担う技術者が配置されています。
例えば、電気ならダムによる水力発電を行っていますが、ダムも立派な土木設備ですね。
土木インフラの維持管理に関わる人が取得すべき資格3選

さてここからは、ここまで紹介したような土木インフラの維持管理に関わる人たちが、取得すべき資格を3つご紹介します。
その資格とは、「1級土木施工管理技士」「技術士」「コンクリート診断士」です。
それぞれ、
・どんな資格なのか
・なぜ取得すべきか
・受験資格、合格難易度
について解説していきます。
1級土木施工管理技士
どんな資格?
「1級土木施工管理技士」とは、大規模な土木工事の施工管理を行うために必要な国家資格です。
保有していると、土木工事において、施工計画の作成・工程管理・品質管理・安全管理・原価管理などを統括できる専門技術者として認められる資格です。
なぜ取得すべき?
ここまで読むと、ある疑問が出てくると思います。

施工管理をする人が取得する資格なんだから、インフラの維持管理をする人がとるメリットがないんじゃない?
そんなことはありません。
筆者が、インフラの維持管理をする人が1級土木施工管理技士を取得すべきと考える理由として、以下の点があります。
①インフラを修繕する人(ゼネコン)と対等に会話できる
インフラの管理者は、劣化した設備を直接自分たちで補修することは少なく、施工会社に発注することがほとんどです。
施工の品質は当然受注者が保証するものですが、発注者側に知識がないと、受注者のいいようにやりこまれてしまうこともあります。
そこで、1級土木施工管理技士を保有するだけの知識があれば、施工に関して受注者任せにならず、対等な会話のもとで自ら適切な判断を下せるようになるのです。
②資格手当がもらえる
筆者が勤務した経験のある鉄道会社では、1級土木施工管理技士を保有していると5,000円/月程度の資格手当がついていました。
5,000円/月×12カ月=60,000円/年、これは大きいです。
毎月飲みに行ける回数が1回増えます。
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皆さんはもっと有用な使い方をしてくださいね。
③他の資格にチャレンジする土台となる
1級土木施工管理技士に求められる知識は、広範な土木知識であり、基礎的なものが多いです。
まずは1級土木施工管理技士にチャレンジすることで、その他の土木資格にチャレンジする際も、何もわからないということは無くなると思います。
それだけでなく、その他の資格の受験要件に、「監理技術者資格者証を保有していること」が挙げられていることがあります。
そのため、1級土木施工管理技士を取得して、監理技術者に登録しておけば、面倒な受験資格の証明(たとえば、大学の成績証明書を出すなど)が省略できることがあるのです。
受験資格・合格難易度
1級土木施工管理技士には、1次試験(学科試験)と2次試験(実地試験)の2つがあり、両方に合格することで資格を取得できます。
それぞれの受験資格と合格難易度は以下の通りです。
1次試験(学科試験)
受験資格:19歳以上であれば誰でも可
合格率:45~60%程度
2次試験(実地試験)
受験資格:1次試験合格に加え、所定の実務経験
「所定の実務経験」とは、大卒+指定学科卒業で3年、大卒+指定学科以外を卒業で4年半など、自身の学歴によりまちまちです。
「指定学科」とは、土木、建築、都市工学、環境工学、資源工学、農業土木、造園など、土木施工に関わる学科を指します。
詳細は全国建設研修センターの「受検の手引」で確認できます。
合格率:30~40%程度
技術士
どんな資格?
技術士は、高度な専門的応用能力をもつエンジニアに与えられる称号です。
技術士は、科学技術に関する計画・研究・設計・分析・試験・評価とそれらを指導できることを国に認められた専門家であり、技術者として最高峰の資格です。
全部で21部門ありますが、インフラメンテナンスを専門とする方は、そのうち「建設部門」を取得する方が多いです。
なぜ取得すべき?
技術士は、医師や弁護士のように業務独占資格というわけではありませんが、技術者として最高峰の資格だけあって、取得するメリットはたくさんあります。
筆者が感じる、土木インフラメンテナンスに携わる人が技術士を取得するメリットは以下の通りです。
①資格手当が(たくさん)もらえる
後述しますが、技術士の取得難易度は非常に高いです。
そのため、資格手当の額も1級土木施工管理技士より高く設定されている会社も多いです。
筆者の勤めた鉄道会社も、15,000円/月程度もらえました。
15,000円/月×12カ月=180,000円/年となり、年収20万円ほどのアップが見込めるのです。
②箔がつく
これは気持ちの面が大きいですが、「技術士を持っている」というのはステータスになります。
名刺にも書けますし、持っているだけで一目置かれ(るような気がし)ます。
最高峰の資格を取ったという自信が、仕事にもいいパフォーマンスを与えてくれ(るような気がし)ます。
③昇進につながる
企業によっては、技術士の取得が昇進要件になっている場合もあります。
そのような場合、早く技術士を取ることが、自身のキャリアアップに直結します。
受験資格・合格難易度
1次試験
受験資格:特になし
合格率:30~50%
2次試験
受験資格:技術士第一次試験合格者又は指定された教育課程(JABEE)の修了者のうち、最低4年の実務経験を有する者
合格率:10%程度
詳細は、日本技術士会のホームページに記載があります。
コンクリート診断士
どんな資格?
コンクリート診断士とは、コンクリート構造物の調査・診断・維持管理に関する幅広い知識を持った技術者を認定する資格です。
日本コンクリート工学会が実施する試験で、民間資格となります。
要するに、コンクリートの劣化診断に関するエキスパートであると認められる資格ということです。
なぜ取得すべき?
①需要が高い資格である
日本における社会資本としてのコンクリートは、約90億㎥あると言われています。
数字が大きすぎて伝わりにくいですが、とにかくとんでもない量です。
これらの社会資本の多くは、高度経済成長期につくられたものです。
すなわち、似たような経年のものが多く、老朽化による異常が一斉に顕在化してくることも考えられるのです。
それらのコンクリートの健全性を適切に判断できる技術者の需要は、今後ますます高まることが容易に想像できますよね。
その技術があることを証明できる資格が、「コンクリート診断士」なのです。
②専門性のアピールにつながる
ひとえに「土木技術者」といっても、その分野は多岐にわたります。
長い社会人生活の中で、自分の専門外の分野、やりたくない仕事に回されるリスクは誰しも抱えているでしょう。
その中で、自分がやりたいことであったり、専門分野の仕事につくには、自身の専門性のアピールが大事です。
「自分はコンクリートが専門である」ということを示していくには、「コンクリート診断士」を保有していることが良いアピールになるでしょう。
③転職にも有利
先ほども述べた通り、今後コンクリート構造物の診断業務の需要はさらに増していくことが想定されます。
そんな社会情勢の中で、転職によるキャリアアップを目指すなら、「コンクリート診断士」を保有していることが好条件の待遇獲得につながります。
実際、転職サイトをのぞいてみると、インフラメンテナンスに関わる業務において、コンクリート診断士を優遇するという募集は多いです。
受験資格・合格難易度
受験資格:e-ラーニングによる講習受講+所定の資格保有または実務経験
合格率:15%程度
詳細は、日本コンクリート工学会のホームページをご確認ください。
どの順番に取得すべき?

ここまで紹介した3つの資格について、筆者は以下の順番で取得することをおすすめします。
取得おすすめ順
①1級土木施工管理技士→②コンクリート診断士→③技術士(建設部門)
その理由は以下の通りです。
理由①難易度順になっている
合格率からも見てわかる通り、難易度順に並んでいます。
徐々に高度な資格を取得していくことで、自身のスキルアップにつながっている実感が湧くことと思います。
理由②受験資格が取得できる順になっている
大卒の場合、各資格の受験資格を最短で得ようとした場合、以下の通りです。
・1級土木施工管理技士:3年(指定学科卒業の場合)
・コンクリート診断士:4年
・技術士:4年(JABEE認定学科卒業+技術士のもとで指導を受けた場合)
そのため、最短で合格すれば4年ですべての資格が取れますが、難易度も加味するとあまり現実的ではありません。
特に、例年コンクリート診断士と技術士2次試験は試験間隔1週間で実施されています。
そのため、コンクリート診断士→技術士という取得順をおすすめしています。
理由③受験勉強が(一部)効率化される
コンクリート診断士→技術士という取得順をおすすめする理由として、受験勉強が一部効率化されることが挙げられます。
具体的には、技術士2次試験の筆記には、「選択科目Ⅱ」にて専門知識が要求されます。
この勉強は、コンクリート診断士を取得できるレベルの知識があれば、かなり効率よく進めることができます。
また、コンクリート診断士や1級土木施工管理技士では記述式の問題もあります。
そこで記述式試験に慣れておくことで、技術士試験の勉強が少し楽になると思います。
おわりに

ここまで、土木インフラの維持管理に関わる人が取得すべき資格を3つ紹介してきました。
いずれの資格も、この業界で働く人のキャリアアップに必ず活かせる資格ですので、ぜひ効率よく取得を目指してください。
それぞれの資格の詳細については、別の記事でもっと詳しく解説したいと思います。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!


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