コンクリートの「表面含浸工法」とは?ケイ酸塩系・シラン系の違いと適用条件を解説

コンクリートの補修

こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

コンクリート構造物の補修・予防保全の方法の一つに「表面含浸工法」というものがあります。

表面含浸工法は、コンクリート表面から内部へ「含浸材」というものを浸透させ、材料の性質を改善することで耐久性を向上させる補修材料です。

一般的な「塗装」や「表面被覆」とは異なり、コンクリートの表面に膜をつくるのではなく、コンクリート内部に浸透して作用する点が特徴です。

橋りょうやトンネル、擁壁などのコンクリート構造物では、凍害や塩害などの劣化を抑制する目的で用いられることがあります。

この記事では、含浸材の種類と、それぞれの適用条件など、実務の視点も交えて詳しく解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

【この記事でわかること】

表面含浸材とは何か

ケイ酸塩系・シラン系・ハイブリッド系の違い

適用条件

施工時の留意点


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鉄コンくん

鉄道会社の土木部門で土木構造物の維持管理を10年程度担当。
特にコンクリートが専門分野です。

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表面含浸材とは?

表面含浸材:コンクリート表面から内部に浸透し、コンクリートの耐久性を向上させる材料

塗料のように表面に膜を作るのではなく、コンクリート内部の細孔に浸透して性質を変化させることが特徴です。

鉄コちゃん
鉄コちゃん

性質を変化?それに何の意味があるの?

鉄コンくん
鉄コンくん

コンクリートは一見すると緻密な材料に見えますが、内部には多数の微細な空隙(細孔)が存在しています。ここに外部から劣化因子が侵入すると、コンクリートの劣化が進むんです。

劣化を防ぐ、すなわち劣化因子を侵入させないように性質を変えるのが含浸材の役割です。

表面含浸材はコンクリート中の空隙に浸透し、

空隙を緻密化する
撥水性を付与する

などの作用によって、劣化因子の侵入を抑制します。


表面含浸工法とは

施工ステップの模式図

表面含浸工法表面含浸材をコンクリート表面に塗布し、材料を内部に浸透させることでコンクリートの耐久性を向上させる工法

一般的な施工方法は次のようになります。

1 表面清掃
2 含浸材の塗布(ローラー・スプレーなど)
3 含浸・浸透
4 乾燥

塗るだけでいいんだ。

「性質を変える」なんていうから、内部に注入みたいなことをしなきゃいけないのかと思ったよ。

塗った部分から徐々に内部に浸透していき、表面から改質が進んでいくイメージです。

材料はコンクリート内部の細孔に浸透し、表層部の性質を改質します。

その結果、水、塩化物イオン、二酸化炭素など、コンクリートの劣化因子の侵入抑制効果が期待できます。

また、表面に厚い被膜を形成しないため、外観をほとんど変えないという特徴があります。


表面含浸材の種類

表面含浸材にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして次の3種類が挙げられます。

・ケイ酸塩系
・シラン系
・ハイブリッド(ミックス)系

それぞれ作用の仕組みが異なります。


ケイ酸塩系含浸材

ケイ酸塩系含浸材:コンクリート中の水酸化カルシウムと反応してできた生成物(C-S-H:カルシウムシリケートハイドレート)コンクリート表面のひび割れを埋めることで表面を緻密にする材料

主な効果は次のとおりです。

・表層を保護する

・0.2㎜以下のひび割れを塞ぐ

・劣化因子の侵入を防ぐ


シラン系含浸材

シラン系含浸材:コンクリート内部に浸透して表面を水をはじくように改質(撥水化)する材料

細孔内部が撥水化することで、水の侵入が抑制されます。

主な特徴は次のとおりです。

・撥水性の付与

・劣化因子の侵入を防ぐ

ただし、水蒸気は通す性質があるため、コンクリート内部の水分が閉じ込められることはありません。
このような性質を透湿性と呼びます。


ハイブリッド系含浸材

ハイブリッド系含浸材:ケイ酸塩系とシラン系など複数の機能を組み合わせた材料

例えば、

・表層の緻密化
・撥水性付与

といった効果を同時に期待することができます。

近年では、このような複合型の含浸材も多く用いられるようになっています。


表面含浸工法と表面被覆工法の違い

コンクリートのひび割れをふさぐなら、この記事では表面被覆工も有効って言ってたよね。表面含浸工法とはどんな違いがあるの?

表面を保護するという点で、役割こそは同じですが、両者にはいろいろな違いがあるんですよ。

コンクリートの表面保護工法としては、表面被覆工法も広く用いられています。

両者の大きな違いは次の点です。

表面含浸工法

・材料がコンクリート内部に浸透
・表面に厚い膜を作らない
・外観変化が小さい
・透湿性がある(シラン系のみ)

表面被覆工法

・表面に塗膜を形成
劣化因子を物理的に遮断
・外観が変わることがある

簡単に言えば、

含浸工法は「コンクリートそのものを改質」
被覆工法は「コンクリート表面を覆い、保護する」

という違いがあります。

ふーん。違いがわかったけど、どうやって使い分けたらいいんだろ。

そこが気になりますよね。次の章で詳しく解説しますね。


表面含浸材の適用条件(メリット・デメリット)

表面含浸工法は、主に次のような場合に適用されます。

・劣化の初期段階(目安として、ひび割れ幅0.2㎜以内
・予防保全
・収縮ひび割れなど、進行しないひび割れの対策

一方で、次のようなケースでは単独での適用が難しい場合があります。

・鉄筋腐食が進行している場合
・大きなひび割れがある場合
・ASR・塩害など、進行性があるひび割れの場合

このような場合には、表面被覆や断面修復など他の補修工法と併用することが一般的です。

具体的な補修方法の使い分けは、こちらの記事をご覧ください。

どんな劣化に対して含浸材が用いられる?

例①凍害で表面がボロボロになった箇所

スケーリングが進行して表面がフレーク状になっているような箇所は、劣化して脆弱になった箇所を除去して含浸材を塗布することで、内部の水分を逃がしつつ外部から水分侵入を防げます

それにより凍害劣化の進行を抑えることができます。

凍害劣化が進んだコンクリート高欄

例②火害で表面に微細なひび割れが多数生じた箇所

300℃~500℃程度の火災を受け、コンクリートの表面に微細なひび割れが出た場合も、含浸材の塗布が有効なことがあります。

火災による被害がひび割れだけで、内部鉄筋の劣化に至ってない場合でも、放置するとひび割れから劣化因子が侵入していきます。

このような進行性のない、あるいは進行が非常に遅いひび割れであれば、予防的に含浸材を塗布することで劣化の進行を抑えることができます。

火災を受けたコンクリート橋

施工時の留意点

表面含浸工法では、施工条件によって効果が大きく左右されることがあります。

主なポイントは次のとおりです。

表面状態

コンクリート表面に汚れやレイタンスがあると、材料が十分に浸透しないことがあります。
そのため、施工前の清掃や下地処理が重要です。

含水状態

コンクリートの含水率が高い場合、細孔が水で満たされているため、含浸材が浸透しにくくなります。

材料によって差異がありますが、概ね8%以上では適用できないと考えていいです。

気象条件

施工時の気温や降雨の影響も受けるため、適切な施工条件を確保することが重要です。

気温が5℃以下だとうまくコンクリート内部に浸透しないので、これを条件とする材料も多いです。

含浸材を使ってはいけない場面

例①スラブの上面で滞水がある場合(シラン系)

スラブ(床板)の上に含浸材を塗布する場合で、屋外で常に水が溜まるような場所にシラン系含浸材を適用する場合は要注意です。

そうなの?水を弾くんだから、大丈夫そうだけど。

シラン系は、常時水圧がかかるような場合に弱く、じわじわ水が入ってしまうんです。

そのため、スラブ上面にやるならきちんと排水経路が確保されていて、滞水しないことを確認したうえで適用するか、他の材料を用いたほうがいいです。

例②コンクリートの背面から水が供給される場合(ケイ酸塩系)

コンクリートの表面だけでなく、背面からも水が回っているような場合は、ケイ酸塩系の含浸材は逆効果になることがあります。

え、なんでだめなの?

シラン系と違い、ケイ酸塩系は表面が緻密になり内部の水を閉じ込めてしまいます

そのため、コンクリート背面から水が供給されるような場面では、湿潤状態を保ってしまい逆に劣化を進行させてしまうことになりかねないのです。


おわりに

表面含浸材は、コンクリート構造物の耐久性向上を目的として用いられる補修材料の一つです。

主な種類として、

ケイ酸塩系含浸材

シラン系含浸材

ハイブリッド系含浸材

があり、それぞれ作用の仕組みが異なります。

また、表面含浸材は比較的軽微な劣化段階での予防保全として有効な工法であり、劣化状況や目的に応じた適切な材料選定が重要です。

既設構造物の維持管理では、劣化の進行状況環境条件を踏まえながら、最適な補修方法を選択することが求められます。

この記事が、コンクリート構造物の補修材料を理解する一助となれば幸いです。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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