こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
今回は、鉄道橋りょうの中でもあまり表に出てこない存在、「移動制限装置(ストッパー)」について解説します。
鉄道コンクリート橋りょうの点検や維持管理に関わっていると、
「これ、何のために付いてるんだっけ?」
「壊れてたらどれくらいヤバい?」
「そもそも壊れてるってどういう状態?」
と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
を中心に、「鉄道コンクリート橋りょうのメンテナンス(維持管理)」の実務目線で解説していきます。
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(筆者)
この記事は、鉄道会社の土木部門で構造物の維持管理を専門にしていた経験のある筆者が解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
移動制限装置(ストッパー)とは?

移動制限装置(ストッパー)とは、その名のとおり橋りょうの過大な移動を制限するための装置です。
主に以下のような目的で設置されます。
ポイントは、
「通常時の動きを拘束するものではない」
という点です。
日常の温度変化や列車荷重による微小な変位は、基本的に支承で吸収します。
移動制限装置は、想定を超える大きな変位が発生したときに初めて働く“保険”のような存在です。
なぜ必要なの?
鉄道橋は、道路橋と比べて地震時の被害許容度が小さいです。すなわち、桁のずれ=即、運行支障につながるということです。
なぜ地震時の被害許容度が小さいかというと、鉄道がレールの上を走っているからです。
レールは、数㎜単位で歪みがないか管理されるものです。
地震で大きく桁がずれようものなら、レールも大きくゆがむことになります。
そうなると、列車の脱線・転覆という大惨事につながりかねません。
過去の大地震では、
支承の破壊 → 桁の移動 → 落橋・逸脱
という被害が多数報告されてきました。
移動制限装置(ストッパー)があれば、桁の大きなズレや、落橋という事態を防ぐことができます。
つまり、移動制限装置(ストッパー)は、列車の脱線・転覆という最悪の事態を防ぐためのフェールセーフ機構として設置されているのです。
移動制限装置(ストッパー)の構造と種類

鉄道コンクリート橋りょうにおける移動制限装置は、比較的シンプルな構造のものが多いです。
代表的な構成は、
となっています。
通常時は、桁とストッパーの間に数cm程度の隙間があり、接触しません。
地震などで桁が大きく移動すると、
この隙間が詰まり、ストッパーが桁の移動を物理的に止めます。
鉄道コンクリート橋りょうでよく採用される移動制限装置の形式には、「コンクリート製ストッパー」「鋼製ストッパー(鋼棒ストッパー・鋼角ストッパー)」「ダンパーストッパー」の3種類があります。
それぞれの形式について、簡単に紹介しますね。
コンクリート製ストッパー

コンクリート製ストッパーは、橋脚や橋台、桁に一体で設けられる最もシンプルな移動制限装置です。
画像のようなコンクリートブロックが設置される構造が多いです。
通常時は桁との間にクリアランスが確保されており、温度変化などによる微小な変位は拘束しません。
地震時などに桁が大きく移動すると、ストッパーに直接当たり、コンクリート同士の接触によって移動を物理的に制限します。
構造が単純で耐久性に優れますが、衝撃が直接伝わるため、接触部の損傷や欠損が生じやすいという特徴があります。
鋼製ストッパー(鋼棒ストッパー・鋼角ストッパー)

鋼製ストッパーは、鋼棒や鋼材(角型など)を用いて桁の移動を制限する形式です。
下部工(橋台・橋脚)に埋設された鋼材が、桁と接触することで、桁の過大な移動を鋼材の耐力で受け止めます。
コンクリート製に比べて部材がコンパクトなため、設置位置の自由度が比較的高いのが特徴です。
一方で、鋼材の腐食が性能低下に直結するため、点検時には腐食状況の確認が重要となります。
ダンパーストッパー
ダンパーストッパーは、内部に封入されたオイル状の液体(粘性流体)を利用して、桁の移動に伴う地震時の慣性力を吸収・減衰する移動制限装置です。
地震時に桁が動くと、装置内部のピストンが作動し、オイルが流動することで抵抗力が発生します。
この抵抗力によって、急激な桁の移動が抑えられ、衝撃力が低減されます。
コンクリート製や鋼製ストッパーのように「当たって止める」方式とは異なり、力を吸収しながら移動を制御する点が特徴です。
維持管理においてはオイルの漏出の有無や鋼材腐食状況の確認が重要となります。
支承との違いは?
よく混同されがちなのが、支承との違いです。
簡単に整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 支承 | 移動制限装置 (ストッパー) |
| 主な役割 | 荷重支持・変位吸収 | 過大変位の制限 |
| 常時使用 | 〇 | × |
| 地震時 | 損傷の可能性あり | 最初に損傷する可能性が高いが、機能する |
| 性格 | 主役 | 保険・安全装置 |
つまり、
普段働くのが支承、非常時に働くのが移動制限装置(ストッパー)
という関係です。
支承についてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
点検でよく見る損傷と着目点
移動制限装置は「普段は働かない」装置ですが、
だからこそ劣化や不具合が見逃されやすいという特徴があります。
ここでは、移動制限装置に生じる代表的な損傷パターンを3つ紹介します。
ストッパー周辺のコンクリート(桁)のひび割れ
地震等によりストッパーと桁が接触すると、ストッパーが設置されている位置の周辺のコンクリートにひび割れが生じることがあります。
橋台・橋脚や、端横桁に、内側から押しぬいてくるようなひび割れがみられることが特徴です。
ひび割れにより橋りょうが使えなくなるようなことはほとんど起こりえないですが、中の鉄筋が座屈または破断していると、移動制限の機能が喪失している可能性が高いです。
鋼材の腐食

これは分かりやすい劣化ですが、支承部に水が回ってくるような腐食環境にある場合、鋼製ストッパーの腐食が進行します。
進行すると、ストッパーに層状錆(魚のうろこのようなさび)が発生したり、最悪の場合ストッパーに穴が開いてしまいます。
このような状態になると、設計上想定している鋼材断面が確保できなくなるため、移動制限機能の喪失に至ってしまいます。
ダンパーストッパーからのオイル漏れ

こちらは、ダンパーストッパーの要となるオイルが、地震や経年劣化の影響で漏出してしまった状態を指します。
この場合、漏出した分のオイルを補充してあげれば、移動制限の機能は回復できることがほとんどです。
維持管理上の注意点
移動制限装置の維持管理で重要なのは、
「大きな地震を受けた後は損傷している可能性が高い部位である」
と知っておくことと、
「本来の役割を果たせる状態か」
を判断できることです。
一見すると、「ひび割れている=すぐ補修」と考えがちですが、移動制限装置を強固に補修しすぎてしまうと、桁よりも耐力が高くなってしまい、地震時に桁のほうが損傷してしまう恐れがあります。
桁が損傷したら、列車の脱線などが生じてしまう可能性があり、列車の安全な運行への影響はとても大きいです。
移動制限装置が壊れているだけなら、地震には弱くなるものの、ただちに列車が脱線するなどのリスクはありません。

闇雲に頑丈にすればいいというわけではないってことね。
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その通りです。
その他の鉄道土木構造物の維持管理(検査)について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
おわりに
鉄道コンクリート橋りょうにおける移動制限装置(ストッパー)は、普段は目立たないけれど、いざというときに構造物を守るまさに「最後の砦」のような存在です。
この記事が、ストッパーの役割の理解を深めることで、鉄道橋りょうの点検・維持管理に関わる方のお役に立てば嬉しいです。
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!





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