高度経済成長期につくられたコンクリートは早く劣化するって本当? 時代背景と技術の発展の歴史を紐解く

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こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

皆さんが生活する街中には、橋やトンネルなど、コンクリートでつくられた構造物が実はたくさんあるんです。

そんなコンクリート構造物に、ひび割れなどの劣化が発生しているのを見たことがあるでしょうか。

実は発生しても大丈夫なひび割れ放置するとだめなひび割れがあるのですが、「劣化が進んでいても大丈夫なの?」「そもそもコンクリート構造物はどれくらいもつものなの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

一般的に、適切に施工され、管理されたコンクリート構造物の設計寿命は50年〜100年程度とされています。

しかし、とある時期に建設された構造物では、50年を待たずして劣化が目立つものも少なくありません。

その理由を、過去の施工・材料条件から現代の対策まで丁寧に解説します。

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

この記事は、鉄道会社でコンクリート構造物の維持管理を専門にしていた経験のある筆者が解説します。

ぜひ最後までご覧ください。


そもそもコンクリートの寿命はどれくらい?

コンクリートの品質を決める要素のイメージ
鉄コちゃん
鉄コちゃん

「50年を待たずして劣化」って言ってるけど、そもそもコンクリートってそんなに長持ちするものなの?

鉄コンくん
鉄コンくん

コンクリート自体は非常に耐久性の高い材料であり、適切に配合・施工・養生されれば、100年以上持つことも珍しくありません

ちょっと待って。配合・施工・養生施工工事をすることだよね。あとの2つはなに?

ごめんなさい、説明不足でしたね。

配合とは、コンクリートの材料を混ぜ合わせることです。

養生とは、コンクリートを配置(これを「打設」といいます)したあと、固まるまでの間に表面を保護することです。

表面を保護?なんのために?

鉄コンくん
鉄コンくん

コンクリートが固まるまでの間に表面が乾燥してしまうと、微細なひび割れがたくさん入ってしまい強度が下がってしまうんです。それを防ぐためにシートで覆ったりするんですよ。

乾燥収縮のイメージ

コンクリートの寿命に影響するのは主に次の要素です。

材料の品質:セメントや骨材、水の品質、塩化物量やアルカリ量

施工条件:水セメント比、打設方法、養生の徹底

環境条件:海風、凍結融解、荷重、CO₂や酸性雨の影響

劣化が生じやすいコンクリートが多く作られた”ある時代”とは?

コンクリートの寿命「材料の品質」「施工条件」「環境条件」の3つで決まるという話をしましたが、このうち「材料の品質」「施工条件」は、構造物をつくる側がどれだけ配慮できるかで決まります。

ところが、この2つの要素をないがしろにすることが多い時代があったのです。

それにより、品質の悪い=寿命が短いコンクリート多く作られました

その時代が、「高度経済成長期」です。日本が大きく発展し、経済的にぐんぐん成長した時代でした。

高度経済成長期に、なぜ品質の悪いコンクリートがたくさん作られてしまったのでしょうか。

その謎を、次の項から解明していきます。


高度経済成長期とはどんな時代だったのか?

高度経済成長期につくられたインフラの一例

高度経済成長期(1955〜1973年)は、 「日本中が同時に工事現場だった」 と言っても過言ではないほど、インフラ整備が爆発的に進んだ時代です。

当時つくられた主なインフラは次のようなものです。

新幹線(東海道新幹線・1964年開業)

世界初の高速鉄道。 東京〜大阪を結ぶ大動脈として、わずか5年で建設されました。

5年で新幹線を作るって、今では考えられないスピードだよね。

鉄コンくん
鉄コンくん

1964年の東京オリンピックに間に合わせるために、とんでもない速度で建設が進められました。

高速道路(名神・東名など)

名神高速(1963年)、東名高速(1969年)を皮切りに、 全国で高速道路網が一気に広がりました。

そのほか、トンネルやダムなど、全国各地でコンクリート構造物の建設ラッシュでした。

こういった需要をさばいていくためには、とにかく早く作ることが最優先でした。

また、同時に大量にものがつくられるということは、材料不足も避けて通れません。

コンクリートの重要な材料の一つに、石や砂といった「骨材」があります。

この骨材は、川から良質なものが採取されることが多かったのですが、材料が不足した時期、困った施工業者たちは海からも採取していったんです。

海から採取しちゃなんかまずいの?いっぱいあるんだからいいじゃん。

たくさんあるからいいというわけではなく、海から取れた骨材を使うことに大きな問題があったんです。詳しくは次の項で解説しますね。

高度経済成長期につくられたコンクリートに何が起きていたのか?

高度経済成長期の時代背景「質より量」であることがわかったところで、次はどのように「量」を確保していたのかについて解説していきます。

ここでは量を確保するためにやられていたことを3つ挙げていきます。

「量」を確保するには、それなりの代償があったのです。

材料のばらつき ― “使えるものは全部使う”時代

当時は材料に関する基準が未整備で、骨材にはこんな問題がありました。

海砂を洗わずに使い塩分が残る

反応性骨材によるASR(アルカリシリカ反応)が発生

さっき言っていた問題はこれです。海砂には、塩分が大量に含まれています。これが鉄筋コンクリートに用いられると悪さをするんです。

それはなんとなくわかるかも。塩が多いと、鉄筋が錆びちゃうんだね。

その通りです。

もう1個の「アルカリシリカ反応」ってなに?

骨材には、コンクリート中のアルカリ成分に反応して膨張してしまう成分(シリカ)を含んでいるものがあるんです。

アルカリとシリカが反応して膨張する反応ということで、「アルカリシリカ反応」といいます。

そのまんまだね。

覚えやすくていいですね。

アルカリシリカ反応が生じると、内部からの膨張圧でコンクリートがひび割れてしまうという問題があるんです。

水多め施工(シャブコン) ― “流れればOK”の現場文化

豆板のイメージ図

コンクリートは、セメントと水が主成分ですが、強度を決めるのはセメントの量です。

しかし、強度を大きくしようとセメントを増やすと、ドロドロで流し込みにくいコンクリートになってしまい、施工性が大きく下がってしまう(=工事に時間がかかる)のです。

そこで、工期短縮を目的に、コンクリートを柔らかくするための“水増し”が横行したのです。

水増しをすると、強度が大きく低下するほか、セメントの粘度が落ちるので材料が分離してしまうのです。

その結果、豆板(まめいた)という、骨材が一か所に集まって隙間だらけの部分が生じてしまうという問題も起こります。

水を増やすと、なんで強度が落ちちゃうの?

セメントと水が反応することでコンクリートになりますが、水が多すぎても全部が反応するわけではありません。

余った水は蒸発するだけなので、水が蒸発した分スカスカで強度の低いコンクリートになってしまうというわけです。

養生不足 ― “固まる前に次の工程へ”

コンクリートは、強度が出る=固まるまでの間、乾燥を防ぐことがとても重要です。

この乾燥を防ぐ工程「養生(ようじょう)」といいます。

養生が不十分だと、表面が乾燥して微細なひび割れが大量に発生します。

ひび割れは、そこから水や塩分などが侵入する、劣化因子の入り口となってしまいます。

しかし、工期がひっ迫している高度成長期の現場では、 「打設したらすぐ次の工程へ」 が当たり前で、養生に時間を割く余裕がありませんでした。

高度経済成長期コンクリートに多い劣化事例

ここまで解説してきたような、材料・施工の問題により、高度経済成長期につくられたコンクリート構造物は、完成してあまり時間がたたないうちからたくさんの劣化が報告されました。

具体的には、以下のような状態がみられたのです。

豆板・剥離

中性化の急速進行

骨材起因の塩害による鉄筋腐食

ASRによるひび割れ

膨大な量が作られた時代に、たくさんの劣化が生じているってのは困りものだね。

そうなんです。しかもこれら高度経済成長期に作られた構造物は経年50年を超えるものばかりで、今後ますます劣化が顕在化していくことが想定されます。

インフラのメンテナンス社会の大きな課題なんだね。

今後ますます労働人口も減りますし、効率的に社会資本を維持していくにはこれこれこういう対策が必要で・・・(熱く語りだす)

あー、その話はまた今度聞くね。

コンクリートのその他の劣化形態について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

高度成長期以前のコンクリートは悪くない?

高度経済成長期につくられたものが品質が悪いってのはよく分かったよ。

でもさ、それより昔のほうが技術も発達してないし、もっと品質悪そうだけど。

意外とそんなことはないんです。

むしろ大正〜昭和初期のコンクリートは、施工量が少なく一つ一つを丁寧に手掛ける職人さんのおかげで高品質なものが多いんです。

だからこそ、適切なメンテナンスをすることで100年以上使われているコンクリート構造物もたくさんあるんですよ。

現代のコンクリートはどう違うのか?

現代のコンクリートは、高度経済成長期の構造物に起きたさまざまな問題から学び料・施工ともに厳格なルールのもとに作られているのが大きな違いです。

材料管理

塩化物量、アルカリ量の上限値が設定された

反応性骨材の使用制限

フライアッシュ等の混和剤によるASR抑制

施工管理

水セメント比の厳格管理

スランプ・空気量・温度の測定

養生の徹底

昔と比べると、もう“別物”と言っていいレベルだね。

おわりに

高度経済成長期につくられたコンクリートが早く劣化してしまう背景には、 「技術が未熟だったから」ではなく、「時代がそれを許さなかった」 という事情がありました。

とにかく早く・大量に作らなければならない

材料も人手も足りない

品質管理の仕組みがまだ整っていない

こうした状況の中で、どうしても“質より量”の施工が広がり、 その結果として、同じような劣化パターンが全国的に発生したわけです。

一方で現代は、

材料の化学的管理

施工の数値管理

点検技術の高度化

補修技術の進歩

これらが揃い、コンクリートの耐久性を科学的にコントロールできる時代になりました。

そして今、私たちが向き合っているのは、 高度経済成長期に一気に作られた膨大なインフラが、 ちょうど寿命を迎えつつある“社会全体の節目” です。

これからの時代は、 「作る」から「守る」へ。 そして「直す」から「予防する」が重視されます。

インフラの維持管理は、社会の安全を支える大きなテーマです。 この記事が、コンクリートの劣化やインフラの未来について、 少しでも興味を持つきっかけになれば嬉しいです。

インフラの維持管理における重要な作業のひとつである、「点検」の具体的なやり方を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

また、社会における重要なインフラの一つ「鉄道」の維持管理はどのように行われているのか興味がある方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

土木
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鉄コンくんの「鉄道」×「土木」×「コンクリート」

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