こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
コンクリートにとって、塩分は劣化を促進させてしまう大敵です。
そんな塩分ですが、目に見えないのがやっかいで、どれくらいコンクリートの内部に塩分が侵入しているか確認するのは容易ではありません。
この記事では、コンクリート中の塩分(塩化物イオン)量を調べる方法について解説します。
それぞれの方法について、どのように使い分けるのかも説明します。ぜひ最後までご覧ください。
塩害とは?
塩害:コンクリート中に侵入した塩化物イオンによって鉄筋が腐食し、構造物の耐久性が低下する劣化現象
コンクリートの内部は、高いアルカリ性を保っています。
その内部にある鉄筋は、「不働態被膜」というバリアのようなもので保護されていますが、塩化物イオンが一定量を超えると、このバリアが破られ、鉄筋腐食が始まります。
鉄筋が腐食すると、
といった形で劣化が進行します。
外観に錆汁やひび割れといった変状が現れた時点では、すでに内部で腐食が進んでいることも多いため、塩化物イオン量を定量的に把握することが重要になります。
塩化物イオン量はどのくらいで危険?
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コンクリート中に塩が入ったらまずいのはわかったよ。
でも、どれくらい入ったらまずいとか、指標みたいなのはあるのかな。
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あくまで目安ですが、1.2kg/m^3という数字が重要ですので、覚えておくといいですよ。
塩害の評価では、「どの程度の塩化物イオン量で鉄筋腐食が始まるか」が重要な指標となります。
コンクリート標準示方書(設計編)には、鉄筋位置(かぶり深さ)における塩化物イオン量が約1.2 kg/m³(コンクリート中のCl⁻量)前後を超えると、発錆のリスクが高まるとされています。
この1.2kg/m^3という数字を「腐食発生限界濃度」といいます。
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既往研究では、水セメント比などに応じて1.2~2.5kg/m3の範囲で変動するといわれていますが、安全側に1.2kg/m3が、対策が必要となる閾値と考えるといいですよ。
塩分量はどのように調べる?
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ざっくり言えば、コンクリート中に1.2kg/m^3以上の塩分が入ったら、腐食が進むんだね。
でも、コンクリート中に入っている塩分の量なんてどうやって確認するのさ。
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調べる方法は様々ありますが、「試料の採取方法」と「採取した試料の分析方法」がキモになります。
ひとことで言えば、「コアまたは粉体」を採取し、「電気化学的に」分析するという流れです。

なんか頭よさそうなこと言ってるけど、全然わかんないよ。
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わかりました。「採取」と「分析」について、もう少し詳しく解説していきますね。
試料の採取方法

塩化物イオン量の調査では、まずコンクリートから「試料」と呼ばれる分析対象となる物体を採取する必要があります。
ここでは、粉を採取する「ドリル法」と、円柱状の塊を採取する「コア法」の2つをご紹介します。
ドリル法(粉末採取)
コンクリート表面からドリルで削孔し、粉末を採取する方法です。
・構造物の損傷が小さい
・現場で比較的容易に実施できる
・採取深さの管理が目分量
・骨材によって誤差が大きくなる
コア採取
コアマシンという専用の機械で、コンクリートを円柱状に切り出し、試料とする方法です。
試料の代表性が高い
詳細な分析が可能
⇒補修設計や重要構造物の詳細調査で用いられます。
・構造物への影響が比較的大きい
・コスト・手間が大きい
塩分量の分析方法


試料を採取したけど、これをどうしたら塩分量がわかるのさ。
舐めてしょっぱいか調べればいいの?
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そんな原始的な方法なわけないでしょう。
採取した試料は、分析して塩化物イオン量を求めます。
ここでは、JIS A 1154「硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法」に示される方法に加え、比較的容易な手法も合わせた3つを紹介します。
以下、各手法の概要を記載しますが、ハンドヘルド型蛍光X線分析装置以外は現場で使うものではなく、専門の研究設備がある箇所に委託することが基本となります。
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そのため、「こんな方法があるんだな。」程度で読み流してもらって構いません。
電位差滴定法
長所:高精度・標準手法・再現性が高い。JISに定められる最も標準的な分析方法
短所:前処理が手間・装置が必要・現場向きではない
位置づけ:詳細評価・補修設計レベルの定量評価に使う
吸光光度法
長所:比較的簡便・複数試料を連続処理しやすい
短所:検量線の管理が必要・濁りや共存成分の影響を受けやすい
位置づけ:試験室でのルーチン測定・多数試料の処理向き
蛍光X線分析(XRF)

測定形態は以下の2通りです。
粉末を持ち帰って測定:試験室で試料を整形し、XRF装置で測定
ポータブルXRFによる現場測定:ハンドヘルド型と言われる、現場で運搬可能なX線照射装置をコンクリート表面に密着させて、その場で元素量を測定
長所:ハンドヘルド型であれば非破壊(または微破壊)・迅速・多点測定が容易・深さ方向や面内分布を広く把握できる
短所:Cl⁻を直接測っていない・精度は化学分析に劣る
位置づけ:スクリーニング・分布把握・詳細評価前の「あたりをつける」用途
数値の正確性は室内試験と比較してやや劣りますが、塩分の有無を判断するのであれば最も迅速かつ簡易に実施可能です。
分析方法の比較(どう使い分けるか)
| 方法 | 精度 | 手間・コスト | 現場適用性 | 主な用途 |
| 電位差滴定法 | ◎ | △ | × 試験室向き | 詳細評価・補修設計 |
| 吸光光度法 | 〇 | △ | × 試験室向き | 多数試料のルーチン測定 |
| 蛍光X線分析(室内試験) | 〇 | 〇 | × | 分布把握 |
| 蛍光X線分析(現場試験) | △ | ◎ | ◎ | スクリーニング |
目的に応じて、以下のように使い分けます。
「とにかく正確に知りたい」→ 電位差滴定法(+コア採取)
「多数の試料を効率よく処理したい」→ 吸光光度法または蛍光X線分析(室内)
「精度は置いといて、現場で簡易・安価に傾向を見たい」→ 蛍光X線分析(現場試験)
まとめ
塩化物イオン量の調査は、
という流れで行われます。ここで特に重要なのは、以下の3点です。
採取方法の適切さ(代表性・深さ管理)
分析方法の特性理解(精度・適用範囲)
調査目的に応じた使い分け(スクリーニングか詳細評価か)
塩分量の数値は単なるデータではなく、「その値が何を意味するか」を読み解くことが塩害評価の本質です。
鉄筋位置での塩化物イオン量が発錆限界(約1.2 kg/m³)を超えているかどうかだけでなく、深さ方向の分布、外観変状、環境条件を総合的に判断することで、構造物の健全性をより正確に把握できます。
また、測定結果は補修方針の選定に直結します。 塩分が表面にとどまっているのか、深部まで浸透しているのかによって、
表面含浸材による予防保全
断面修復による除去
電気防食による腐食抑制
など、採るべき対策は変わります。調査で得た数値を「どう使うか」を理解することが、塩害対策の第一歩です。
補修方法の選び方や判断基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。 調査結果を補修設計にどうつなげるかを知りたい方は、ぜひそちらもご覧ください。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!
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