【解説】コンクリートにひび割れが生じる原因を教えます。

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こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

皆さんの身の回りにも、コンクリートでできているものはたくさんあると思います。

それらのコンクリート構造物(製品)に、ひび割れが生じているのを見たことはないでしょうか。

実は、コンクリートにひび割れが生じる原因はたくさんあります

それらの原因に応じて、放っておいても大丈夫なひび割れと、放っておくと危ないひび割れがあるのです。

この記事では、ひび割れの原因と放っておいて大丈夫なのかについて、コンクリート構造物の維持管理が専門の筆者が解説します。

ぜひ、最後までご覧ください。

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

この記事は、鉄道会社の土木部門で働いた経験を有する筆者が解説します。

筆者はコンクリート診断士を保有しており、コンクリート構造物の維持管理を専門にしています。

コンクリートのひび割れとは?

コンクリートのひび割れのイメージ図

コンクリートのひび割れとは、コンクリートの表面が割れた状態のことを指します。

ひび割れは、少し難しい言い方をすると、「様々な要因で発生したひずみが、コンクリートの伸び能力の限界を超えると生じるもの」です。

ひび割れの幅・発生要因によって有害なものか無害なものか分けられます。

コンクリート標準示方書(設計編)によれば、0.3㎜以下のひび割れ設計上許容されることとなっています。

0.3㎜以下のひび割れは、「ヘアークラック」と呼ばれ、特段対処が不要とされるパターンが多いです。

また、鉄道の維持管理の指標として用いられることの多い「鉄道構造物等維持管理標準・同解説」によれば、0.2㎜以上のひび割れはAランク(最も悪い判定)となります。

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

鉄道では、0.2㎜を目安にランクをつけていますが、「0.2㎜を超えたから直ちに補修だ!」とか言っているわけではありません。

あくまで維持管理上の判定の目安です。

ひび割れにはどんな原因がある?

ひび割れの発生原因を体系的に整理した図

ここからは、ひび割れの発生原因を解説します。

ひび割れの発生要因は、大きく「環境要因・使用材料によるもの」「構造に起因するもの」「施工時の配慮不足によるもの」「災害等によるもの」の4つに分けられます。

4つのカテゴリの中にも、様々な要因が考えられます。

例えば、「環境要因・使用材料によるもの」の中には、「塩害」「凍害」「アルカリ骨材反応」「中性化」「化学的侵食」などがあります。

それぞれの要因に応じて、どのような補修をすべきかが変わってくるので、要因の見極めはとても重要です。

それでは、次の項からはそれぞれの要因について簡単に解説していきますね。

環境要因、使用材料によるもの

まず初めに、環境要因・使用材料によるひび割れについてですが、こちらはコンクリート構造物がおかれている環境条件や、コンクリートに使用する「骨材」と呼ばれる材料によって生じるひび割れです。

先ほども記述しましたが、ここでは、「塩害」「凍害」「アルカリ骨材反応」「中性化」「化学的侵食」の5つを紹介します。

塩害

塩害によって錆汁が出ている様子

塩害とは、コンクリート中に塩化物イオンが侵入することにより、鉄筋等の鋼材の腐食が促進される現象のことを指します。

飛来塩分が多い海岸付近や、冬季に塩化物イオンを含む凍結防止剤を散布する地域にて発生しやすい現象です。

鋼材の腐食によって生じる錆汁が、ひび割れとともにみられることが多いです。

凍害

凍害でコンクリート表層が劣化した様子

凍害は、コンクリート中に進入した水分が凍結膨張することにより生じます。

長期にわたる凍結と融解の繰返し作用をうけ、コンクリートが徐々に劣化する現象です。

寒冷地で特徴的な劣化現象で、コンクリート表面がフレーク状にボロボロと剥離してしまうような劣化を起こします。

アルカリ骨材反応

アルカリ骨材反応で白色析出物が出ている様子

アルカリ骨材反応とは、コンクリートを構成する材料の1つである「骨材」の中の、ある種の鉱物(反応性鉱物、シリカ)とコンクリート中の水酸化アルカリが化学反応し、コンクリートの異常膨張、ひび割れを生じさせる現象です。

長期にわたってゆっくりと進行し、亀甲上のひび割れが出ることが一般的です。

中性化

中性化とは、もともと高いアルカリ性を有するコンクリートに、外気中の二酸化炭素が侵入しコンクリート中の水酸化カルシウムと反応することで炭酸カルシウムとなり、アルカリ性が低下する(=中性に近づく)現象です。

炭酸化とも呼ばれます。

中性化自体は、コンクリートのひび割れを生じさせる現象ではありません。

中性化が進むと、コンクリート中の鋼材(鉄筋)を保護する「不働態被膜」というものが破壊され、腐食する状態となります。

中性化したコンクリートに、水が侵入することで、鋼材腐食に伴うひび割れが発生するというメカニズムです。

中性化の進行度合いを判定する、「中性化試験」についてはこちらの記事でまとめています。

興味がある方はぜひ合わせてご覧ください。

化学的侵食

化学的侵食とは、コンクリートが高い酸性やアルカリ性の物質や油などにより「溶け出す」ことや「コンクリート中の成分と反応して膨張しひび割れる」現象を指します。

化学的侵食は普通の環境ではまず発生しませんが、温泉地帯や酸性・硫酸塩土壌等に建てられた構造物、下水管などで生じる劣化現象です。

構造に起因するもの

構造ひび割れの模式図

構造に起因するひび割れとは、コンクリートに作用する荷重等の外力によって生じるひび割れのことです。

ここでは、「構造ひび割れ(曲げ・せん断)」「過大荷重」の2つを紹介します。

構造ひび割れ(曲げ・せん断)

曲げひび割れ、せん断ひび割れのイメージ図

構造ひび割れ(曲げ・せん断)とは、曲げモーメントやせん断力と呼ばれる、構造物に作用する力によって生じるひび割れを指します。

曲げひび割れ:曲げモーメントによって生じるひび割れで、構造物の中央付近(橋桁なら、支間中央付近)に長辺の直角方向に生じる

せん断ひび割れ:せん断力によって生じるひび割れで、構造物の端部付近(橋桁なら、支承部付近)に斜めに生じる

過大荷重

過大荷重とは、文字通り構造物に過大な荷重が作用することで生じるひび割れです。

ではどこからが過大な荷重なのでしょう。

構造物には、「設計荷重」と呼ばれるものが存在します。

これは、「この構造物を使っている間、最大でこれくらいの荷重が作用しうるだろう」とされる荷重です。

構造物は、この設計荷重には耐えられる=壊れないように設計されています。

これを上回る荷重が過大荷重となるのです。

鉄コン君<br>(筆者)
鉄コン君
(筆者)

鉄道における「荷重の考えかた」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ぜひ合わせてご覧ください。

施工時の配慮不足によるもの

施工時の配慮不足によるひび割れは、主に施工してすぐ(数日以内)に生じるものが多いです。

ここでは、「乾燥収縮」「水和熱」「施工不具合」の3パターンについてご紹介します。

乾燥収縮

乾燥収縮の原理を示した図

乾燥収縮は、コンクリート打設直後の養生不足によって生じます。

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

「養生」とは、打設直後のコンクリート表面をシートなどで覆うことで保護することをいいます。

養生が十分にされていないと、気温・湿度・風などの影響によりコンクリートの表面から水分が蒸発します。

それにより、「プラスティック収縮ひび割れ」と呼ばれる、田んぼの水が干上がったような状態のひび割れが生じてしまいます。

水和熱

水和熱によるひび割れは、コンクリート中で水和反応と呼ばれる反応が起こった際に生じる熱が、養生期に急激な冷却を受けた際に生じるものです。

発生する熱量の大きい、大断面のコンクリートを打設した際に生じやすいひび割れとなっています。

施工不具合

コールドジョイントの写真

施工不具合は、様々な要因がありますが、よく見られるものは適切な打ち込み間隔を守らなかったときに生じる「コールドジョイント」があります。

これは、前に打ち込まれたコンクリートの上に後から重ねて打ち込まれたコンクリートが一体化しない状態となって、打ち継いだ部分に不連続な面が生じているものです。

コンクリートは、打ち込み間隔を一定の時間より短くしなさい、と定められています。

これは、このコールドジョイントの発生を防ぐためなのです。

災害等によるもの

地震

地震によって高架橋の柱にひび割れが生じた様子

地震によるひび割れは、設計で想定した荷重を上回る外力の作用により構造物に曲げひび割れやせん断ひび割れが生じるものです。

特にせん断ひび割れが出ている場合、余震などの比較的弱い揺れでも、構造物に急激な破壊をもたらす可能性のある危険なひび割れです。

火害

高架橋に火害ですすが付着した様子

コンクリートが火災によって被害を受けて生じた劣化を、「火害(かがい)」と呼びます。

コンクリートが火災で高温にさらされると、受熱温度に応じて表面の状態が変化します。

受熱温度状態
~300℃すすの付着
300℃~600℃変色(ピンク色)
600℃~950℃変色(灰白色)
950℃~1200℃変色(淡黄色)
1200℃~溶融

すすが付着している程度であればコンクリートの性能にはほとんど影響がありません。

また、500℃までであれば,時間で回復すると言われています。

そのため、受熱温度が500℃を超えているかが対策要否の目安です。

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鉄コンくん
(筆者)

ピンク色に変色していたら、詳細な点検をおすすめします。

それ以外の色になっていたら、基本的には打ち替えなどの対策が必要になってきます。

放っておいても大丈夫なことが多いひび割れ

コンクリートは、その材料特性から微細なひび割れはどうしても生じてしまうものです。

そういったひび割れを、許容しても大丈夫なものか、そうでないものかを判断する目安を解説します。

放っておいても大丈夫なひび割れなんてあるの?

進行しないひび割れもあるんです。例えば、施工時の配慮不足によって生じたもので、幅が0.3㎜に満たないようなものであれば、ほとんど放っておいて大丈夫なことが多いです。

また、火災や地震によるひび割れも、軽微なもの(0.3㎜以下)なら進行しないものが多いです。

ふーん。じゃあ0.3㎜以下のひび割れなら全部大丈夫なのかな。

そんなに簡単な話だったらいいんですけどね・・・

次は、放っておくとまずいものを紹介しますね。

放っておくと進行する可能性が高いひび割れ

放っておくと進行する可能性が高いのは、「環境要因・使用材料によるひび割れ」です。

凍害やアルカリ骨材反応は一般的に進行が緩やかと言われますが、無対策ではほぼ確実に進行するものです。

塩害や化学的侵食は、劣化の進行が早いため、数年放置すると補修不可能な状態となってしまうこともあり得ます。

鉄コンくん<br>(筆者)
鉄コンくん
(筆者)

「環境要因・使用材料によるひび割れ」が疑われる場合は、速やかに原因を特定し、対策を検討しましょう。

おわりに

ここまで、コンクリートに生じるひび割れの原因について解説してきました。

コンクリートにはさまざまなひび割れの要因があり、放っておいて大丈夫なものもあれば、放置すると取り返しのつかなくなるものもあります。

きちんとひび割れの原因を見極め、対策が必要か判断することが、コンクリート構造物を長く使ううえでとても重要なポイントになります。

ひびわれをはじめとした、劣化の判定基準の一つに、鉄道総合技術研究所が発刊する「鉄道土木構造物維持管理標準・同解説」という書籍があります。どんな書籍か、また実務でどう使われるのかこちらの記事でまとめています。合わせてご覧ください。

この記事では紹介していませんでしたが、鉄道橋りょうにおける重大なインシデントの一つ「落下物」があります。こちらの記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ合わせてご覧ください。

また、鉄道土木構造物の維持管理業務(検査)に興味がある方は、こちらの記事でまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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