こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
街の中で「橋りょう」を目にすることは多いですよね。
その中でも代表的なものに「道路橋」と「鉄道橋」があります。
この2つ、見た目は似ていますが、よく観察すると鉄道橋のほうが「重厚で」「ゴツい」ことが多いのです。
同じコンクリート構造なのに、なぜここまで違うのでしょうか。
その理由を一言でいえば、 橋の上に載る“荷重”がまったく違うから です。
この記事では、まず荷重の基本から解説します。
そのうえで、道路と鉄道で設計上の考えが大きく異なる「活荷重」の違い をわかりやすく整理していきます。
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(筆者)
この記事は、鉄道会社の土木部門で設計にも携わった経験のある筆者が解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
荷重とは?

設計の世界においては、橋梁に作用する力は、すべて「荷重(かじゅう)」と呼ばれます。
荷重というと“重さ”だけを想像しがちですが、実際にはもっと広い概念です。
■ 橋に作用する主な荷重
設計で用いる荷重にはさまざまな種類がありますが、代表的なものをいくつか紹介します。
| 種類 | ざっくりしたイメージ | 具体例 |
| 死荷重 | 橋そのものの重さ | コンクリート、鉄筋、軌道、舗装等 |
| 活荷重 | 上を通る“動くもの”の重さ | 車、列車、人等 |
| 地震荷重 | 地震で揺さぶられる力 | 地震時の慣性力 |
| 風荷重 | 風にあおられる力 | 高架橋の風圧等 |
| 温度荷重 | 暑さ寒さで伸び縮みする力 | 夏冬の温度差等 |
この中で、道路橋と鉄道橋の違いを決定づけるのが「活荷重」 です。
その理由はのちほど詳しく説明しますが、ここでは、荷重の中でも設計上とくにウェイトが大きい「活荷重」「死荷重」についてもう少し解説していきます。
■ 死荷重とは?
死荷重(しかじゅう)とは、橋そのものの重さのことです。
死荷重の大きさは基本的にずっと変化しないので、設計上は扱いやすい荷重です。
具体的には、以下のようなものの重さです。
■ 活荷重とは?
活荷重とは、橋の上を動き回るものの重さのことです。
いつ・どこに・どれだけ載るかが変わるため、設計で最も頭を使う荷重です。
具体的には、以下のようなものの重さです。
設計荷重とは?
ここで、設計上重要な概念である、「設計荷重」というものを解説します。
ここを理解できれば、鉄道と道路の設計の考え方の違いをマスターするまであと一歩です。
設計荷重は、荷重の“種類”ではなく、荷重の“扱い方”のルールです。
死荷重・活荷重・地震荷重などの実際の荷重は、ばらばらに作用するものではなく、同時に作用することがあります。
これらの荷重に対して、 安全係数をかけたり、作用する組み合わせを決めたりして 「設計で使う値」にしたものが設計荷重です。
道路と鉄道の活荷重の性質の違いとは?

ここまで、荷重とはなにかについて説明してきました。
その中で、道路と鉄道では「活荷重」の性質が違うことがポイントであると触れてきましたね。
道路と鉄道の活荷重の違いについて、詳しく説明していきます。
まずは、それぞれの活荷重の特徴についてです。
■ 道路の活荷重の特徴
道路の活荷重の特徴には、以下のようなものがあります。
つまり、道路の活荷重は 「軽い・バラバラ・間隔が空く」という特徴があります。
■ 鉄道の活荷重の特徴
次に、鉄道の活荷重の特徴には、以下のようなものがあります。
すなわち、鉄道の活荷重は 「重い・集中・連続」しているという特徴があるのです。
■ 道路 vs 鉄道:活荷重の性質比較
ここまでの内容を、表でまとめて比較してみます。
| 観点 | 道路 | 鉄道 |
| 1軸あたりの重さ | 5〜10t | 10〜20t |
| 1台/1両あたりの軸数 | 2〜4軸 | 4軸 |
| 列としての長さ | 数台 | 10両=40軸、貨物=100軸超 |
| 荷重の位置 | 分散 | レール上に集中 |
| 荷重の連続性 | 車間距離あり | 軸が一定間隔で連続 |
| 繰返し荷重 | ランダム | 毎回同じ位置 |
| 設計で重視 | 終局限界 | 使用限界(変形・疲労) |
■ 荷重の規模感の違いを数字で見る

一つの車両(編成)が通過した際に、橋りょうに作用する活荷重の大きさは「軸重×軸数」で計算できます。
さきほどまでの内容をもとに、道路と鉄道の活荷重の大きさの違いを改めて数字で見てみます。
| 区分 | ケース | 軸重 | 軸数 | 合計荷重の目安 |
| 道路 | 大型トラック 1台 | 約10t | 3軸 | 約30t |
| 鉄道 | 通勤電車 10両編成 | 約12t | 40軸 | 約480t |
| 鉄道 | 貨物列車 20両編成 | 約20t | 80軸 | 約1600t |
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(筆者)
道路と鉄道の“荷重の世界”がまったく違うことが、 この数字だけで直感的に伝わりますね。
鉄道と道路のもう一つの違い:「変形量」の考え方
ここまでの話で、鉄道橋は、道路橋に比べて大きな活荷重を受けることから、設計荷重が大きくなるということがわかりました。
活荷重の大きさだけでも鉄道橋が重厚になる理由は十分ですが、実はもう一つ、鉄道特有の重要な設計条件があります。
それは、鉄道橋では「受ける荷重に対して「壊れないこと」だけでなく、「変形を抑えること」も強く求められる」という点です。
なぜなら、橋の変形がそのまま軌道に伝わり、列車の走行安全性や乗り心地に影響を与えるからです。
道路では多少のたわみがあっても走行に支障が出にくいですが、鉄道では軌道の精度が命綱です。
このため、鉄道橋では剛性を高く保ち、変形量をできるだけ小さく抑える設計が求められます。
鉄道橋がゴツく見える理由は?
鉄道は、道路と比較して「大きな設計荷重を受ける」「変形量を抑える必要がある」という違いがあることがわかりました。
これらの条件をクリアするためには、必然的に道路橋よりも「強い構造」にしなくてはなりません。
つまり、
といった理由から、見た目にも重厚な構造になります。
これが、鉄道橋がゴツく見える理由なのです。
おわりに
この記事では、鉄道と道路の設計の考え方の違いを、作用する活荷重の違いという観点から解説しました。
鉄道橋がゴツく見えるのは、
という厳しい条件を、何十年も満たし続ける必要があるからです。
見た目の違いの裏側には、鉄道の安全を支える設計思想と経験の積み重ねが詰まっているのです。
この記事が、鉄道と道路の設計思想の違いについて理解を深める一助となれば幸いです。
また、鉄道橋りょうの構造については、部材の名称や役割についてはこちらの記事で、支承についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
興味がある方はぜひ合わせてご覧ください。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!





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