こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
この記事では、鉄道コンクリート橋りょうに用いられる支承(ししょう)の種類について解説します。
「支承とはなんぞや?」というものから、「この支承はどんな橋りょうに用いられる?」といった疑問まで解決していきます。
皆さまのお悩み解決の一助になれば幸いです。
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この記事は、鉄道会社の土木部門で働いた経験のある筆者が解説します。
筆者は、コンクリート診断士を保有しており、コンクリート構造物の維持管理が専門分野です。
支承とはなに?どんな役割?
支承とは、主桁と下部工の間に設置され、下部工へ力を伝達する部材です。水平移動や回転の機能を有しており、主桁に作用する温度伸縮や地震力を吸収します。
支承には、「固定支承」「可動支承」の2種類があります。
「固定支承」は、その名の通り、桁の動きを固定(制限)し、安定させる支承です。
図面上、F(Fix:固定)と表されます。
「可動支承」は、桁の伸縮や回転を許容する支承です。図面上、M(Move:可動)と表されます。
通常は、桁の始終端のうち片方が固定支承、もう片方が可動支承を採用するという組み合わせが多いです。
そのほかの橋りょうの部材名称について知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
支承は、「シュー(沓)」という言い方をすることもあります。支承とシュー(沓)は同じ意味と考えていただいて問題ありません。
支承をより細かく部材分けした際に、「上沓(ウワシュー、ウエシュー)」「下沓(シタシュー」「沓座(シューザ)」ということもありますので、覚えておいて損はない表現です。
「沓」という字、「シュー」や「シュウ」と入力しても、なかなか変換できませんよね。
私は、「クツ」と入力して変換しています。
これ以降の解説では、それぞれの支承の適用範囲として、橋りょうの略記号で表す場合があります。
橋りょうの略記号については、こちらの記事で解説していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。
コンクリート橋りょうの支承の種類
コンクリート橋りょうに用いられる支承には、様々な種類があります。
橋りょうが作られた年代や、構造形式によって適切な支承構造が異なるためです。
ここからは、実際に鉄道コンクリート橋りょうに用いられてきた、または現在も用いられている支承の種類について紹介していきます。
この記事では、「ゴム支承」「ローラー支承」「鋳鉄または鋳鋼支承」「ベアリングプレート支承(BP支承)」「ロッカー支承」「コンクリートヒンジ支承」「簡易すべり支承(古レール造)」「鋼板支承」の8種類について解説します。
ゴム支承

ゴム支承は、薄いゴムと鋼板を交互に積み重ねた構造となっています。
このような構造にすることで、1枚のゴムにするより、上下方向の剛性が増加するほか、水平方向の変位吸収力が増加します。
ゴム支承は、固定・可動がなく、「免振支承」と呼ばれる支承です。
鉄道橋りょうの設計においては、ゴム支承を採用する場合、地震時に大きく桁がずれることを抑制するために、必ず「移動制限装置(ストッパー)」を設けることが定められています。
移動制限装置(ストッパー)がどういうものなのかについては、別の記事で詳しく解説しますね。

ローラー支承

適用桁長:25m~
使用年代:明治~
ローラー支承は、ローラーという部材の転がりにより水平方向への移動を許容する支承です。
ローラーの数によって水平移動量を制御できるため、大スパンの桁にも適用可能です。
鉄道では、PC連続桁や、PC下路桁に採用された実績が多いです。
鋳鉄または鋳鋼支承

適用桁長:~25m
使用年代:不明
線支承とも呼ばれ、鉛直荷重を下シューの円柱面と上シューの平面の接触(線接触)で支える支承です。回転方向の変位は、下シューの円柱面で追従する構造となっています。
「鋳鉄」と「鋳鋼」のちがいは、炭素の含有量です。鋳鋼のほうが炭素が多く含まれており、耐腐食性・耐摩耗性等にすぐれています。
鉄道では、RCT桁、PCT桁などに用いられています。

ベアリングプレート支承(BP沓)

適用桁長:25m~
使用年代:不明
ベアリングプレート支承は、ベアリングプレートという部材で上シューと下シューを接続する構造です。
ベアリングプレートの形状は、上沓と接触する面が平面、下沓と接触する面を円柱面あるいは球面となっています。
プレート自体で鉛直荷重を支持するとともに、上シューとの平面接触部で伸縮機能を持たせているほか、下シューとの曲面接触部で回転機能を受け持たせています。
鉄道では、PCT桁や、PC下路桁などに用いられています。

ロッカー支承

適用桁長:25m~
使用年代:明治20年代~昭和40年代
ロッカー支承は、上シューと下シューの間にロッカーと呼ばれる部材が設置されており、シューとロッカーは鎖錠子(サジョウシ)と呼ばれる部材にて接続されている構造となっています。
ロッカーがダルマのように転がることで、水平方向の移動を受け持ちます。
ロッカー自体に高さがあるため、地震時にロッカーが転倒すると桁が大きく落下する恐れがあります。
そのため設計上は、ロッカーの転倒時に桁を受け止める、待ち受け工を設けることが定められています。
鉄道においては、長大スパンのPC連続桁などに適用された事例が多いです。

コンクリートヒンジ支承

適用桁長:10m~
使用年代:大正初期~
コンクリートヒンジ支承は、鉄筋コンクリートでできた2対のヒンジの間に弾性材をかませ、回転方向の移動を受け持つ構造となっています。
鉄道においては、ラーメン橋の脚部(基部)に採用された事例がいくつかあります。
簡易すべり支承(古レール造)

適用桁長:10m程度
使用年代:昭和初期~
簡易すべり支承は、古レールを活用しており、下部工(橋台)に埋め込まれたレールの頭面と上シューが接している構造となっています。
レールと上シューの平面接触部で、水平方向の移動を受け持っています。
昭和初期から第2次世界大戦前後の、物資が不足していた時代に古レールを転用した構造物が数多くみられており、これもその一種です。
10m程度の比較的短いスパンのRCT桁や、H鋼埋込桁にて採用された事例が多いです。
古レールを活用した構造物については、別の記事で改めて解説したいと思います。
鋼板支承とは?

適用桁長:10m程度
使用年代:昭和40年代~
鋼板支承は、平板状のソールプレートとベッドプレートからなる構造で、地震時の水平力はソールプレート横のサイドブロックにて抵抗します。
サイドブロックは、ベッドプレートに溶接にて取り付けられてる構造です。
支間10m程度のRCT桁にて多くの採用実績があります。
おわりに
ここまで、鉄道コンクリート橋りょうに用いられる支承の種類について解説しました。
支間や建設年代に応じて、様々な構造の支承があることがわかりました。
それぞれの構造に応じた劣化の形態がありますので、実際の劣化事例や、維持管理のポイントなどはまた別の記事で解説していきたいと思います。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!




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