こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。
この記事では、鉄道橋りょうに使われることがある「瀝青材(れきせいざい)」という材料について詳しく解説します。
「瀝青材ってなに?」「どんな用途で使われるの?」といった疑問にお答えします。
また、瀝青材が劣化するとどうなるのか、日常の点検や維持管理のポイントについても解説していきます。
鉄道を始めとした、瀝青材を用いたインフラの維持管理をしている方などの参考になれば幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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この記事は、鉄道会社の土木部門で働いた経験のある筆者が解説します。
筆者は、コンクリート診断士を保有しており、コンクリート構造物の維持管理が専門分野です。
瀝青材(れきせいざい)とはどんな材料?一般的な用途は?
「瀝青材(れきせいざい)」って、耳慣れない言葉ですよね。
土木を専門とする方でも、あまり聞いたことのない方もいるかと思います。
瀝青材とは、原油を精製したあとに残った残留物のことです。
身近なものでいえば、アスファルトも瀝青材にあたります。
瀝青材は、常温では固体または半固体の状態です。
色は、黒色や暗褐色で粘り気があるのが特徴で、加熱すると徐々に液体になる性質をもっています。
鉄道ではどんな用途で使われる?
ここでは、鉄道で瀝青材がどのように用いられるのかについて、「目地材」としての用途と、「充填材」としての用途の2つを解説します。
いずれも、鉄道橋りょうに用いられているものです。
「目地材」としての用途

まずは、「目地材」(めじざい)としての使われ方について解説します。
「目地材」とは、コンクリートの隙間を充填する材料です。
コンクリートには、実は一定の間隔で隙間を設けなくてはならないことになっていて、その隙間のことを「目地」と呼びます。
コンクリートは、温度変化で伸び縮みする材料であるため、隙間を設けないと、伸び縮みの影響でひび割れが発生してしまうのです。
その隙間を埋めるための目地材として、瀝青材が用いられることが多いのです。
鉄道コンクリート橋りょうではどんな部位に使われるかというと、「高欄」と呼ばれる、橋りょう左右の壁の隙間埋めによく用いられます。
「高欄」がどんな部材なのか、またその他の鉄道橋りょうの部材についても、こちらの記事で詳しく解説していますので、よければご覧ください。
目地材によく使われる製品としては、「エラスタイト」「ケンタイト」などがあります。
図面上には「目地材」としか書かれないことが多いのですが、実務上では「エラスタイト」「エラス」などとよく言います。
「充填材」としての用途

次に、「充填材(じゅうてんざい)」としての用途について解説します。
こちらの用途は、鉄道土木構造物の維持管理に関わっている方でも、あまり詳しくない方も多いかと思います。
「充填材」というからには、何かに詰められている(充填されている)のです。
これは何に充填されているかというと、支承部(移動制限装置)に用いられています。
「移動制限装置」という耳慣れない単語がまた出てきましたが、これは簡単に言うと地震などで桁が大きく動いて、桁が落下してしまうことを防ぐための装置です。
すなわち、桁の移動を制限する装置ということで、そのまま「移動制限装置」と呼ばれているのです。
ここに瀝青材がどのように使われているかというと、「鋼棒ストッパー」や「アンカーバー」などと呼ばれる形式の装置において、鋼棒の腐食を防ぐために鋼棒自体を覆ってしまう材料として用いられるのです。
鉄道のみならず、道路橋でも用いられる構造形式となっています。
瀝青材の劣化と維持管理のポイント
瀝青材の劣化でよく見られるのは、「目地材の抜け出し」と「充填材の漏れ出し」の2つです。
ここでは、それぞれどんな現象で、維持管理上はどのようなポイントがあるのか解説します。
目地材の抜け出し

「目地材の抜け出し」は、経年劣化や橋りょうの振動等によって、目地材が外に抜けてきてしまっていたり、目地材が部分的に破損している状態です。
目地材がなくなっても、構造物の性能に影響を及ぼすことはありません。
しかし、目地材が抜けたことで生じた隙間から漏水や落下物が生じて、桁下を通行する人に被害を与えてしまう可能性があります。
もちろん、抜けた瀝青材自体が落下して人に当たるリスクもあります。
目地材の抜けが生じている場合は、周辺環境に応じて対策をするか検討すると良いでしょう。
充填材の漏れ出し

移動制限装置付近から、真っ黒な液体のようなものが垂れた跡が出ているケースを見たことがあるでしょうか。
このような現象が起きている場合、充填材が漏れ出ている可能性があります。
先述のような鋼棒ストッパーの場合は、充填材(瀝青材)の役割は、あくまで移動制限装置本体である鋼棒の腐食防止です。
そのため、こちらもただちに構造物の性能に影響を及ぼすことはありません。
しかし、腐食防止機能が失われていることから、移動制限装置周辺が湿潤な環境であったりすると、鋼棒の腐食が生じてしまうおそれがあります。
充填材の漏出がみられた箇所では、周辺に鋼棒の腐食によって生じた錆汁(さびじる)が垂れてきていないか、併せて確認すると良いでしょう。
おわりに
この記事では、「瀝青材」という材料について、どんな材料なのか、また鉄道ではどんな用途で使われるのかについて、詳しく解説しました。
あまり耳慣れない材料でしたが、鉄道構造物の長寿命化や、地震時の安全確保のためにとても重要な役割を果たしていることがわかりました。
また、瀝青材が劣化するとどうなるのか、日常の点検や維持管理のポイントについても解説しました。鉄道の維持管理をしている方などの参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!




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