【解説】コンクリートの反発度試験の基礎・手順から実務での使い方まで

コンクリートの劣化・診断

こんにちは。記事の閲覧ありがとうございます。

コンクリート構造物の点検や劣化診断の現場では、「このコンクリート、まだ設計時の強度を保っているのか?」と悩む場面がよくあります。

この記事では、既設コンクリート構造物の強度を非破壊で推定できる試験として代表的な「反発度試験(シュミットハンマー試験)」のやり方と、どんな場面で使う試験なのかについて詳しく解説します。

【この記事でわかること】

・反発度試験とはなにか

・どのように行うのか

・どんな場面で有効か(メリット・デメリット)

ぜひ最後までご覧ください。

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鉄コンくん

鉄道会社の土木部門で土木構造物の維持管理を10年程度担当。
特にコンクリートが専門分野です。

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コンクリートの強度とは?

そもそも、強度を推定する試験っていうけどさ、コンクリートの「強度」ってなにを表してるのさ。

コンクリートの「強度」とは、外から力を受けたときにどれくらい耐えられるかを表す指標です。
一般的には「圧縮強度」を指すことが多く、構造物の安全性や健全度を判断するうえで重要な基礎データになります。

圧縮強度・引張強度・曲げ強度などいくつかの種類がありますが、構造設計や維持管理の場面で最もよく使われるのが「圧縮強度」です。

反発度試験も、この圧縮強度を推定するための試験方法のひとつです。

なんで圧縮強度が重要なの?

コンクリートの特性として、圧縮力に強いというものがあります。そのぶん、引張に弱いという弱点がありますが、それを鉄筋で補うのが、日常的によく耳にする「鉄筋コンクリート」という構造なんです。

コンクリートの強みである「圧縮強度」がちゃんと確保されているかは、構造物の性能に大きな影響を与えるんですよ。

コンクリートの特性についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

なぜコンクリートの強度を測る必要がある?

コンクリートの強度を推定している技術者のイメージ

コンクリート構造物の強度を把握する最大の目的は、「その構造物が、今後も安全に使い続けられる状態にあるか」を確認することです。

ひび割れやはく離、鉄筋腐食などの劣化が見られる場合、外観だけでは内部の健全度までは判断できません

一見すると大きな問題がなさそうに見えても、コンクリート自体の強度が想定より低下しているケースもあります。

このような場面で強度を把握することで、次のような判断が可能になります。

・今すぐ補修・補強が必要かどうか

・しばらく経過観察でも問題ない

荷重制限や使用制限を検討すべきか

また、補修・補強設計を行う際にも、既設コンクリートの強度が分からなければ、過度に安全側の設計になってしまい、コストが無駄に大きくなることがあります。

逆に、実際よりも強度を過大評価すると、安全性を損なうおそれもあります。

このように、コンクリートの強度を把握することは、「安全性の確保」と「合理的な維持管理・補修計画」の両立のために欠かせない要素です。

コンクリートの補修方法については、こちらの記事で解説しているので、興味がある方は合わせてご覧ください。

コンクリートの強度を測るには?

新設時であれば「供試体(きょうしたい)」と呼ばれる、実際に構造物に使われるのと同じコンクリートの塊を別で作って、実際に圧縮(押しつぶす)試験をすることによって、「設計基準強度」(設計上、構造物に必要としている強さ)を満たしているかを確認できます。

しかし、使用中の橋や擁壁などの既設コンクリート構造物では、実際の部材を壊してコンクリートの塊を採取し、強度を測るわけにはいきません。

そのため、維持管理の現場では、劣化診断や補修・補強の要否判断を行うために、非破壊・微破壊によってコンクリートの強度を推定する技術が重要になります。

コンクリートの強度を把握する方法は、いくつかの種類があります。
目的や構造物の状況に応じて、適切な試験方法を選択することが重要です。

ここでは、代表的な試験方法を紹介します。

微破壊試験

コア採取のイメージ図

微破壊試験とは、新設時の供試体または既設構造物から採取したコアを用いて、圧縮強度試験を行う方法です。

構造物に若干の損傷を与えることから、「微」妙に「破壊」する試験で、微破壊試験といいます。

実際の部材と同じコンクリートの強度を確認できるため、精度は高いです。

一方で、既設構造物からコアを採取する(穴を開ける)必要があり、補修が必要になる点がデメリットです。

「コア」ってなに?なんか強そうだね。

コンクリートにドリルで穴をあけて、円柱状に“芯”を抜き取った試験体のことです。

直径は5~10㎝、長さは10~20㎝程度が一般的です。

500mlのペットボトルと同じか、ちょっと小さいくらいか。思ったより大きいかも。

非破壊試験

非破壊試験とは、構造物を壊さずに強度を推定する方法で、維持管理の現場では最も使われる機会が多い手法です。
代表的なものとして、次のような試験があります。

·  反発度試験(シュミットハンマー)

·  超音波伝播速度試験

·  衝撃弾性波法

これらの非破壊試験は、コンクリートの物性や表面状態などの影響を受けやすく、単独では強度を正確に「測る」というよりも、強度の目安をつかむための方法として位置づけられます。

微破壊試験・非破壊試験の特徴をまとめたのが以下の表です。

区分主な試験方法何がわかるかメリットデメリット主な使用場面
破壊・微破壊試験供試体圧縮試験
コア供試体圧縮試験
圧縮強度を直接確認できる・精度が高い
・実構造物の強度を直接評価できる
・構造物を損傷する
・補修が必要
・実施箇所に制約
重要構造物の詳細調査、補修・補強設計
非破壊試験反発度試験
超音波試験 など
強度の推定値(目安)・構造物を傷つけない
・現場で簡易に実施可能
・広範囲を短時間で調査可能
・誤差が大きい
・表面状態や含水状態の影響を受けやすい
劣化診断の初期調査、スクリーニング

この中でも、現場での手軽さと普及度の高さから、最もよく用いられているのが「反発度試験」です。
次章では、この反発度試験について詳しく解説します。

 反発度試験とは?

反発度試験(シュミットハンマー試験)とは、コンクリート表面に一定のエネルギーで打撃を与え、そのときのはね返り量(反発度)からコンクリートの圧縮強度を推定する非破壊試験です。

専用の測定器(シュミットハンマー)をコンクリート表面に押し当てるだけで測定できるため、供用中の橋梁や高架、擁壁などの既設コンクリート構造物に対して、現場で手軽に実施できる強度推定方法として広く使われています。

反発度試験の大きな特徴は、

構造物を傷つけずに測定できる

大がかりな設備を必要とせず、現場で短時間に実施できる

という点にあります。

一方で、反発度試験はあくまで表面硬さをもとに強度を推定する簡易的な試験であり、測定結果はコンクリートの材齢、表面状態、含水状態、配合、劣化状況などの影響を受けやすいという特性があります。

そのため、反発度試験の結果だけでコンクリートの強度を断定するのではなく、必要に応じてコア採取などの他の試験と組み合わせて評価することが重要です。


反発度試験のやり方(手順)

どんな試験なのかはわかったよ。

じゃあ、ハンマーでコンクリートをたたいてみればいいんだね。

ちょっと待ってください。反発度試験のやり方は、国や学会が認めた規格で定められているんです。きちんとした結果を得たいなら、その方法に従わないとだめですよ。

反発度試験のやり方は、

JIS A 1155:2012「コンクリートの反発度の測定方法」

日本材料学会「シュミットハンマーによるコンクリートの圧縮強度判定方法指針」

土木学会「硬化コンクリートのテストハンマー強度の試験方法(JSCE-G 504-1999)」

などで定められています。

ここでは、最も一般的な、日本材料学会が定める試験の手順を説明します。

JIS A 1155の中では、試験器具の名称が「リバウンドハンマー」となっていますが、これは記事の中で記載している「シュミットハンマー」とほぼ同義です。

正確には、リバウンドハンマーのいくつかのタイプのうち、最も有名でよく使われるのがシュミットハンマーという名称なのです。

測定準備

よし、シュミットハンマーを持ってきたよ。さてたたいてみようか。

その前に、使用前の点検をしましょう。ハンマーでこれをたたいてみてください。

なにこれ?石みたいだけど。

これは、テストアンビルという、専用の点検器具です。
これをたたいて所定の数値が出れば、ハンマーが正常な状態であると判定できるんです。

測定面を決める

次に、測定面を決めていきます。

測定面は、なるべく平滑で、角部から3㎝以上内側の、湿っていない面にしましょう。ハンマーを垂直に当てられる面を選んでくださいね。

わかったよ。ずいぶん条件が多いね。

規定回数の打撃

さて、じゃあ叩いてみるよ。

(カン!)

はい、終わったよ。次はどうするの?

まだ一回しか叩いてませんよね。

全部で20回叩かないと、信頼できる数値が得られないんですよ。

えぇー!20回もやるの?腕が疲れちゃうな。

20回の値を記録しておいて、平均から±20%より外れている値は除外します。

除外した分は、追加で取り直してくださいね。あと、それぞれの点は、3㎝以上離さなきゃだめですよ。

20回やったのに、まだ追加で取らなきゃいけないこともあるの・・・

得られた値に補正式を使って強度換算

叩き終わったよ。これで強度がわかるんだね。

まだなんです。得られた平均値に、条件に応じて補正値を加えて計算しなければならないのです。

鉄コちゃん、先ほどハンマーを使った際、どの向きで叩きましたか?

うーんと、確かハンマーを下に向けてたよ。

その場合、-90°の角度補正をしなくてはなりませんね。

得られた値に対して、「打撃角度」「材齢」「乾燥状況」に応じた補正値を加えます。

【角度補正値:Δ R1】

反発度 R/打撃角度+90°+45°-45°-90°
10+2.4+3.2
20-5.4-3.5+2.5+3.4
30-4.7-3.1+2.3+3.1
40-3.9-2.6+2.0+2.7
50-3.1-2.1+1.6+2.2
60-2.3-1.6+1.3+1.7
打撃角度の参考図

【乾燥状況補正値:ΔR2】

測定位置が湿っており、打撃の跡が黒点になる場合: +3.0

測定位置が濡れている場合: +5.0

【材齢補正係数 :α】

材齢(日)材齢補正係数 α
0~9試験を実施しない(適切な評価が困難)
101.55
111.51
121.46
131.42
141.38
151.34
161.29
171.25
181.21
191.16
201.12
211.11
221.09
231.08
241.06
251.05
261.03
271.02
281.00
それ以降補正なし

これらの補正値を以下の式にいれて計算すると、反発度からコンクリート強度が算出できます。

【日本材料学会によるテストハンマー強度推定式 】

F(N/㎜2 )=(-18.0+1.27×R0)×α

R0 = R+ΔR1+ΔR2

では、さっき鉄コちゃんが測った数値から強度を計算してみましょう。

うーんと、20回の平均値は「26.5」だったかな。

ふむふむ。では、「角度」「乾燥状況」「材齢」はどうですか?

えっとね、角度は下向きだから-90°表面は少し湿ってて古いコンクリートだから材齢はわかんないな。

つまり、R=26.5、ΔR1=2.7、ΔR2=3.0、α=1.0となりますね。

これを式に入れると、

R0=26.5+2.7+3.0=32.2

F=(-18.0+1.27×32.2)*1.0=22.894 N/mm2

これが、試験で得られた強度になります。設計値などと比べてみてどうですか。

設計計算書を見ると、設計値は「21N/㎜2」だったから、これは強度が落ちてない健全な状態ってことだね!

この結果だけ見れば、そういうことになりますね。

正確には、表面硬さ≠内部強度なので、あくまで目安ですが。

反発度試験はあくまで強度低下の有無を確認する指標です。

実際に補修の要否を判断する場面では、その他の劣化状況等も加味して、総合的に健全度を判定することが重要です。


どういう場面で反発度試験が役立つ?

試験のやり方はわかったよ。でも反発度試験って、どんな時に役に立つのかな。

いろいろな例がありますが、ここでは実場面での活用例2つ紹介します。

火災を受けたコンクリートの補修要否判定

火災を受けたコンクリートの写真

コンクリートは火災を受けて高温になると、表面に微細なひび割れが出たり、内部の鉄筋の付着強度が落ちたりします。

ひび割れ程度なら補修しなくても問題ないことが多いのですが、内部がどうなってるか確認するには手間がかかります

そこで、反発度試験を実施するにより、被災前と比べて著しい強度低下が見られない場合「構造的な強度低下の可能性は低い」と判断する材料のひとつになります。

ただし、反発度試験はあくまで一次評価として位置づけ、必要に応じて詳細調査と併用することが重要です。

火災の後の調査には、打音調査も有効です。打音に必要なハンマーをはじめ、コンクリート構造物の点検ツールこちらで詳しく紹介しています。

凍害によるスケーリングでボロボロになったコンクリートの内部劣化状況判定

凍害によるコンクリートの劣化状況写真

寒冷地にあるコンクリートが凍結融解作用を繰り返し受けると、コンクリートの表面がボロボロになってしまいます。

これをスケーリングというのですが、見た目にはかなり劣化が進んでいるように見えます。

内部にひび割れが進展し、構造物の強度低下に至っていた場合は、補修が必要になります。

でも、やはり内部状態の確認には手間がかかるものです。そこで、反発度試験の出番です。

ボロボロになった表層のコンクリートを落として、反発度試験で強度を確かめてみると、案外強度にはほとんど影響がないことが多いのです。

そういった場合は、含浸工法などで表面の保護だけしてあげれば、安価にそれ以上の劣化を抑えることができるのです。

おわりに

反発度試験は、非破壊でコンクリートの強度を推定できる便利な手法です。

本記事で紹介したように、材齢や打撃角度、乾燥状態などの補正を適切に行うことで、十分に実用的な数値を得ることが可能です。

維持管理の現場では、「壊さずに、でも確かな情報を得る」ことが求められます。 反発度試験は、その第一歩として非常に有効な手段です。

この記事が、現場での判断や試験の実施に役立つことを願っています。

それでは、最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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